
グローバルGAP(GLOBALG.A.P.)認証(Good Agricultural Practices:農業生産工程管理)とは、農業生産における「安全性・環境保全・労働安全」などの国際的な基準を満たしていることを証明する認証制度だということは前回の記事で説明しました。
いまや、日本では多くの人がGAPの認証を「取らなきゃいけない」と言っているが、慎重に考えなければならない側面もあります。
前回解説したグローバルGAPがその例です。
ドイツの民間の会社が作ったユーレップGAPがグローバルGAPという名前になって、世界全体の標準GAPみたいに言われるようになっています。
その中身は、特に、畜産に関連する動物福祉(アニマル・ウェルフェア)の基準が高いことが1つの特徴である。
具体的には、飼料・原料の出所がわかることと、カウハッチ(生後2,3ヶ月齢までの講師を1頭ずつ収容して飼育する野外装置の小屋)・つなぎ飼い・豚のストール(母、豚を拘束する狭い檻)のような動物の行動の自由を制約する飼い方は認められない、などとなっている。
現在の日本の飼養実態とはかけ離れています。
このため、日本の現状の経営スタイルでクリアすることは、とても現実的には難しく、「こうした基準は形を変えた貿易障壁とも言えますが、これが日本からの農産物輸出の拡大の前に立ちはだかっていることを認識しないといけない」との声もある。
なぜなら、グローバルGAP協会が、「日本の皆さん、これを取らないとEUに輸出できませんよ」という感じで説明してくるからです。
ところが、農水省がEUの農家を調べたら、なんとEUでグローバルGAPに入っている畜産農家は0.1%にも満たないというのです。
ドイツ、フランス、イギリスでは1戸も取得していない。
自分のところが1戸も取得していないようなものを、「日本の農家は取らないと買ってやらない」と言うならとんでもない。
非課税障壁だと思ったら、別にEUはそういうことを言っているのではない。
それはグローバルGAP協会の説明のようなのです。
要は、日本の農家さんの皆さんにグローバルGAPに入ってもらえれば、登録料と更新料を得られると協会側がたくらんでいると考えざるを得ない。
結局、生産者にとっては、安全な工程管理の認識を定着させる事は重要な方向性ではあるが、輸出に不可欠なわけでもなく、取得すれば消費者が高く買ってくれるとか登録・更新料と遂行コストに見合うような目に見えるメリットが不明なのに、慌てて取得する必要などないと思います。
当初は、東京オリンピックの選手村の食材として使うには、GAP取得が不可欠として、日本政府も推奨していました。
途中からは、取得でなくても「取得に向けて準備していれば認められる」と、なぜか「不可欠」だったはずの要件が緩められ、国費を年間6億円以上も投入して、GAP取得サポート事業を展開した。
しかし、東京オリンピックが終わったら、すぐに忘れ去られるようであれば、何のための推進だったのかも疑問が残ります。
また、日本では、GAPを環境直接支払いの補助金を受けるための要件とすることになったが、これも理論的には不整合な側面があります。
環境直接支払いの考え方は、当然のレベルとして最低限、環境にはこれだけの配慮をしているというベースがある農家に対して、もう一段高いレベルの環境に優しい農法を実践している人には、環境直接支払いを支給しますということになる。
GAPは「農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組み」のことである。
環境に関する要素もあるが、基本的には安全な農業生産工程管理の遂行であり、標準的なレベルの環境への配慮を問うものではないから、土台にするには違和感がある。
EUでも、環境支払いの要件はGAPではなく、別途定めた満たすべき環境基準があります。