
これから経営管理ビザを取得することを検討している場合は、以前の改正内容を踏まえて申請手続きを進める必要があるでしょう。
以下の4つの要件は、制度改正後も変わらず審査の中核をなします。
制度が改正されようとも、審査官が各要件で何を確認しようとしているのかを理解し、的確にアピールすることが許可への近道です。
要件1:事業所の確保
審査官はまず、「申請者が事業を行うための物理的な基盤を、日本国内に確かに確保しているか」を確認します。
これは事業の実在性を示すための第一歩です。
具体的には、独立した事業所(オフィス、店舗など)が確保されている必要があります。
入管庁は、事業の継続性が求められるため、月単位の短期賃貸スペースや、容易に処分可能な屋台などは事業所として認めていません。
同様に、住所貸しサービスであるバーチャルオフィスも、物理的な活動拠点がないため原則として認められません。
自宅兼事務所も不可能ではありませんが、その場合は住居スペースと事業用スペースが明確に区分されていること、建物の賃貸借契約で事業目的での使用が許可されていることなど、ハードルは高くなります。
最も確実なのは、事業専用の物件を確保することです。
その際、以下の点が重要です。
- 契約形態:賃貸借契約書の使用目的が「事務所」「店舗」など事業用であることが明記されている必要がある
- 契約者名義:契約者は設立した「法人名義」であることが原則。これにより、法人が事業主体として物件を使用していることが明確になる
- 物理的設備:申請時には、机、椅子、電話、PC、複合機といった事業運営に必要な備品が設置され、すぐにでも営業を開始できる状態であることを写真などで示す必要がある
要件2:事業の規模
次に審査官は、「事業が一定以上の規模を持ち、安定的な運営が見込める組織か」を判断します。
その指標となるのが資本金と常勤職員数です。
現行制度では「資本金500万円以上」または「日本在住の常勤職員を2名以上雇用」のいずれかを満たすこととなっていますが、前述した通り、2025年の改正案では、これが「資本金3000万円以上かつ常勤職員1名以上」へと大幅に厳格化される見込みです。
この要件で特に重要なのは、単に資本金の額を用意するだけでは不十分という点です。
審査官は「その資金をどのようにして形成したのか(資本金の出所)」を厳しく審査します。
特に申請者が若い、あるいは留学生からの起業といった場合、「なぜこれほどの大金を持っているのか?」という点に合理的な説明が求められます。
ペーパーカンパニー設立のための見せ金や、出所不明な資金ではないことを証明する必要があります。
そのために、以下のような客観的な資料を通じて、資金の形成過程を明確に立証しなければなりません。
- 自己資金の場合:自身の給与収入から長年にわたり貯蓄してきたことを示す、給与振込と残高の推移がわかる預金通帳の写し
- 親族からの贈与・借入の場合:贈与契約書や金銭消費貸借契約書、そして実際に資金が送金された記録(銀行の送金証明書など)
- 退職金などの場合:退職金支払証明書など
資本金の出所説明は、申請者の信頼性を示す上で極めて重要なプロセスです。ここで曖昧な説明をすると、事業全体の信憑性が疑われ、不許可の大きな原因となります。
要件3:事業の安定性・継続性
物理的な拠点と規模の要件を満たした上で、審査官が最も重視するのが「その事業は、将来にわたって安定的に継続していけるのか?」という点です。
これを証明するための最重要書類が「事業計画書」です。
事業計画書は、審査官に対して、事業がいかに実現可能で、収益性があり、日本経済に貢献できるかを、論理的かつ客観的なデータに基づいてプレゼンテーションする書類と言えます。
説得力のある事業計画書には、以下の要素を具体的かつ詳細に盛り込む必要があります。
要件4:申請者の適格性
最後に、事業そのものだけでなく、「申請者自身が経営者・管理者としてふさわしい人物か」という点も審査されます。
経営者として申請する場合、法律上の明文規定はありませんが、実務上、事業内容に関連する職務経験や実績が求められます。
他方、管理者として申請する場合は、より明確に「事業の経営又は管理について3年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む)」が求められます。
もう一つの重要な要素が日本語能力です。
日本語能力は、法律上の必須要件として定められてはいませんが、日本で事業を実際に経営する上で、日本語でのコミュニケーション能力は不可欠です。
もし、日本語能力が低い場合、審査官は「この申請者は、どうやって日本で事業を経営していくのだろうか?」という疑念を抱きます。
これは事業の実現性を損なうマイナス要素となり得ます。
日本語能力試験(JLPT)の合格証などを提出することは、必須ではないものの、事業の実現性をアピールする上で非常に有効な手段です。
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