ウラン濃縮とは


⏱読み終わるまで約3

近年、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢など世界各国で軍事交戦が激化しています。

 

そこで、よくメディアでウラン濃縮というワードをよく耳にする機会が増えました。

 

アメリカが最新のミサイルで核施設(ウラン濃縮施設)を攻撃したというニュースもありました。

 

ウラン濃縮とは、ズバリ、天然ウランに含まれるウラン235(U-235)の割合を人工的に高める工程を指します。

 

このプロセスは、原子力発電や核兵器の燃料を得るために不可欠です。

 

以下では、ウラン濃縮の目的、工程、技術、施設、国際的な規制まで詳しく解説します。


■ 1.ウランとは何か?

天然ウランは以下のような同位体(同じ元素だが質量数が異なる)で構成されています。

同位体 質量数 天然ウラン中の割合 特徴
ウラン-238(U-238) 238 約99.3% 核分裂しにくい
ウラン-235(U-235) 235 約0.7% 核分裂を起こす(核燃料になる)
ウラン-234(U-234) 234 ごく微量 崩壊生成物で重要ではない

つまり、原子力利用に必要なU-235が非常に少ないため、その割合を高めるのが「濃縮」です。


■ 2.濃縮の目的

  • 原子力発電用燃料:U-235を 3~5%程度 に濃縮(軽水炉用)

  • 研究用原子炉:U-235を 20%程度 に濃縮

  • 核兵器:U-235を 90%以上 に濃縮(兵器級)


■ 3.ウラン濃縮の工程(プロセス)

【1】六フッ化ウラン(UF₆)への変換

  • 天然ウラン鉱石(U₃O₈など)から精製し、「六フッ化ウラン(UF₆)ガス」に変換します。

  • UF₆は常温では固体ですが、加熱すると気体となり、分子量の差を利用した分離が可能になります。

 

【2】分離プロセス

以下の2つが代表的な濃縮方法です:

 

【A】ガス遠心分離法(Gas Centrifuge Method)※現在の主流

  • 高速回転する円筒容器(遠心分離機)内にUF₆ガスを入れ、重いU-238と軽いU-235を分ける方法。

  • 連続的に分離を繰り返す「カスケード(cascade)」と呼ばれる構造で濃度を徐々に上げていきます。

  • エネルギー効率が良いため、現在最も多く使われています。

 

 

【B】ガス拡散法(Gaseous Diffusion Method)※旧式

  • UF₆ガスを微細なフィルターに通し、軽いU-235の方がわずかに早く通過する性質を利用。

  • 非常に大量のエネルギーを要し、旧ソ連や米国などで使用されていましたが、現在はほぼ廃止。


■ 4.濃縮後の処理

  • 濃縮されたウラン(enriched uranium) → 燃料棒に加工し、原子力発電所などに供給。

  • 残りの劣化ウラン(U-238の比率が高い) → 「劣化ウラン(Depleted Uranium, DU)」として保管。時に砲弾の素材などに利用される。


■ 5.国際的な規制と安全保障

ウラン濃縮技術は軍事転用(核兵器開発)につながる可能性があるため、国際的に厳しく監視されています。

  • IAEA(国際原子力機関)が各国の濃縮施設を査察。

  • 核兵器不拡散条約(NPT)により、非核保有国は兵器級濃縮の開発を禁止。


■ 6. 主なウラン濃縮施設の例

濃縮施設 方法 特徴
日本 濃縮工学センター(青森県六ヶ所村) ガス遠心分離法 民生用、IAEA監視下
イラン ナタンズ、フォルド施設 ガス遠心分離法 核開発疑惑で国際問題に
アメリカ ピカリングトンなど 主にガス遠心分離法 軽水炉用燃料供給国

■ まとめ

ポイント 内容
ウラン濃縮 核燃料用にU-235の割合を高めること
なぜ必要? 天然ウランにはU-235が少なすぎるため
方法 主にガス遠心分離法を使用
用途 原子力発電、研究炉、核兵器(高濃度)
規制 IAEA、NPTなどにより厳重監視