亡国の種苗法廃止、狙いは何なのか


⏱読み終わるまで2分

2017年、わずかな審議時間で、種苗法の廃止が、不意打ち的に採決されてしまった。

 

 

都道府県が、優良品種を安く普及させるために、国が予算措置をしてきた根拠法がなくなれば、優良品種の安価な供給ができなくなります。

 

 

命の要である主要な食料の、その源である良質の種を安く提供するには、民間に任せるのではなく、国が責任を持つ必要があるとの判断から種子法があったはずです。

 

 

しかし、これを民間に任せてしまえば、公的に、優良種子を開発して、安価に普及させてきた機能が失われてしまいます。

 

 

その分、種子価格は高騰するというのが、当然の帰結であるように思われます。

 

 

実際、稲において民間種子として販売されている「みつひかり」の種子価格は、公的品種の10倍もするというデータがあります。

参考 : 「水稲種子の販売価格」農水省穀物課調べ

 

 

日本政府は、「生産資材価格の引き下げのため」と言いながら、それに逆行することは間違いなく、かつ、公的な育種の成果を民間に譲渡することを義務付けた規定(「農業競争力強化支援法8条四号※)がセットにされてきたことから、

背後に潜む目的が透けて見えるのです。

 

 

 


 

※「農業競争力強化支援法8条四号

(農業資材事業に係る事業環境の整備)
第八条

国は、良質かつ低廉な農業資材の供給を実現する上で必要な事業環境の整備のため、次に掲げる措置その他の措置を講ずるものとする。

一~三 略

四 種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。

 


 

その背景には、公的な育種・農民が作る自家採取の種子を、グローバル企業が開発する特許種子に置き換えようとする、世界的な種子ビジネスの攻勢があるといわれています。(京都大学:久野教授)

 

 

実際、グローバル種子・農薬企業のM社は、2003年までの6年間に、日本の愛知県農業試験場とコメ品種「祭り晴」のCM化の共同研究を行っておいた。

 

 

しかし、愛知県の住民など58万人に及ぶ反対署名で途中で断念した経緯があります。

 

 

イギリスでは、サッチャー政権時代に民営化政策の一環として、公的育種の事業を担ってきた植物育種研究所(PBI)や国立種子開発機関(NSDO)が、1987年にグローバル種子・農薬企業のU社に売却され、さらに、1998年には、M社に再売却されている。

 

 

1970年代から民営化までの時期、PBI育成の公共品種が小麦生産の80%を占めていたが、2016年には、イギリスでは、フランスやドイツなどのグローバル種子・農薬企業を中心としてつくられた民間品種に完全に置き換わってしまった(前出:久野教授)。