仲介貿易にも許可が必要?経産省通達から読み解く“仲介取引”とは


今回は少し専門的なお話ですが、以前にも記した「仲介貿易取引」に関する経済産業省の通達について、できるだけわかりやすく解説していきます。

 

これ実は「輸出」じゃないのに輸出の許可が必要になるケースもある、という少しややこしい制度なんです。

 

 


そもそも仲介貿易って何?

まず、「仲介貿易」とは何かを説明しましょう。

 

たとえば、あなたが日本にいながら、中国の会社とイランの会社の間で工作機械の売買契約を取りまとめたとします。

 

貨物そのものは日本を通らないし、日本から出荷もしない。

 

でも、あなたが売買契約の締結や価格の調整に関わった場合、それは「仲介貿易」と見なされる可能性があります。

 

つまり、

  • 実際に貨物を動かすのは外国間

  • 日本にいるあなたが“契約”“交渉”に関わる

これが「仲介貿易取引」と呼ばれるものです。


「契約するだけ」でも許可が必要?

この通達では、「日本の居住者が外国間の貨物の売買などに関与する場合」、その内容によっては事前に経済産業大臣の許可が必要になると定められています。

 

ここでのポイントは次の3つです。

 

ポイント①:「居住者」が関与したら対象

たとえば、日本法人の社員、日本に住む個人、あるいは日本法人の海外支店などが契約に関わると対象になる可能性があります。

ポイント②:「売買」「貸借」「贈与」などが対象

単に「見積を出す」「資料を提供する」だけならOKですが、

  • 貨物の売買契約を仲介する

  • 輸送経路や価格などの主要条件を決める
    などを行う場合、規制対象になります。

ポイント③:対象となる「貨物」は要チェック

特に以下のような貨物は注意が必要です。

  • 核兵器やミサイルなど軍事転用が懸念されるもの

  • 輸出貿易管理令別表第1に記載される貨物(例:工作機械、通信機器など)

 


具体的な例で見てみよう


 

ケース

規制対象になる?

理由

日本の商社が、ロシアと北朝鮮の間の売買契約を仲介 なる

日本居住者が核関連貨物の契約に関与

日本人技術者が、海外企業に契約書のドラフトを提供 状況次第

契約締結に積極的に関与すれば対象

日本企業が、東南アジア間の取引で“輸送手配”だけ担当 ならない

単なる物流支援で契約行為に関与しない

 

申請の手続きと書類

仲介貿易の許可を取るには、次のような書類が必要です。

 

  • 仲介取引許可申請書

  • 契約書または注文書の写し

  • 誓約書(写しが原本と同一であることの証明)

  • 申請理由書(誰と誰の取引か、貨物名、最終用途などを詳しく書く)

 

基本的には、「仲介をしようとする前」に申請が必要です。契約後や出荷後では手遅れになることもあります。


許可審査では何を見られるの?

審査の際には、次のような視点で判断されます。

 

  • 契約の信頼性(虚偽がないか)

  • 貨物が最終的にどこに行くのか(目的国、エンドユーザー)

  • 用途が平和的か(核兵器や軍事利用に使われないか)

 

必要に応じて、経産省から補足資料の提出や説明を求められることもあります。


知らないうちに“違反”にならないために

仲介貿易というと「自分には関係ない」と思いがちですが、実は意外と身近なところにリスクがあります。

 

とくに、海外支援や貿易仲介をしている方は、

 

  • 「これは本当に輸出に当たらないのか?」

  • 「契約に関与していないか?」

 

と自問してみてください。

参考:「外国為替及び外国貿易法第25条第4項の規定に基づき許可を要する外国相互間の貨物の移動を伴う取引について 」