
国際輸出管理レジームについて
安全保障貿易管理に係わる国際的な枠組みとしては、国際条約と国際輸出管理レジーム(枠組み)があります。
「レジーム」というとあまり聞きなれない言葉ですが、訳すと「枠組み」のことであり、”条約”という程の縛りはないですが、各国が協力し、安全保障貿易管理に関する取り決めをおこなっていこうということです。
この国際輸出管理レジームに伴い、日本ではその取り決めとして「外国為替及び外国貿易法」(外為法)に基づいて実施されています。
国際輸出管理レジームの主な目的
目的は以下のようなものがあります。
- 武器や軍事転用可能な貨物や技術が、国際社会の安全性を脅かす国家やテロリスト等に渡らないようにする
- 国際社会の平和と安全を脅かすおそれのある国家やテロリスト等への渡出を防止する
普段の取引(輸出入)をする中で、ミサイルや戦車などをそのまま輸出しようとすることは稀です。
ここで気をつけたいのは、普段の生活で使用しているもの(民生品)が、このような兵器の製造にも使われていることがあるということです。
具体的な例を下図に示しました。
上図のようなことが各国で懸念され、今この現在でさえ、どこかで核兵器などの大量破壊兵器等が製造・利用されています。
これにより、日本でも輸出管理の重要性を輸出者に呼びかけています。
下図は輸出管理の目的と対応をまとめた図になります。
国際輸出管理レジームには輸出令別表第1の各項目グループごとに4つのグループがあります。
1.原子力供給国グループ(NSG)
原子力供給国グループ(Nuclear Suppliers Group:NSG)は、1974年のインドの核実験(カナダ製研究用原子炉から得た使用済燃料を再処理して得たプルトニウムを使用)を契機に創設され、1978年にNSGガイドラインを制定しています。
具体的な根拠規定は、外為法第48条1項(貨物)及び第25条(技術)、輸出貿易管理令(以下「輸出令」)第1条(貨物)及び外国為替管理令(以下「外為令」)第17条(技術)である。
規制項目は、輸出令別表1に列挙される貨物のうち2の項に示される貨物、及び外為令別表に列挙される技術のうち2の項に示される技術が原子力関連資機材・技術として輸出管理の対象となっている。
2.オーストラリア・グループ(AG)
1984年、イラン・イラク戦争の際に化学兵器が用いられていたことが発覚したことを契機に、化学及び生物兵器開発・製造に使用し得る関連汎用品及び技術の輸出管理を通じて、化学・生物兵器の拡散を防止することを目的に規制の対象とされることとなった。
この枠組は、オーストラリアが議長国を務めていることから「オーストラリア・グループ(Australia Group:AG)」と呼ばれいます。
規制項目は、輸出令別表1に列挙される貨物のうち3の項及び3の2の項に示される貨物、及び外為令別表に列挙される技術のうち3の項及び3の2の項に示される技術が化学兵器・生物兵器及びこれらの関連技術などが輸出管理の対象となっている。
3.ミサイル技術管理レジーム(MTCR)
正式名称は(MTCR:Missile Technology Control Regime,大量破壊兵器の運搬手段であるミサイル及び関連汎用品・技術の輸出管理体制)と呼ばれ、核兵器等の大量破壊兵器不拡散の観点から、大量破壊兵器の運搬手段となるミサイル及びその開発に寄与し得る関連汎用品・技術の輸出を規制することを目的としています。
核兵器の運搬手段となるミサイル及び関連汎用品・技術を対象に1987年4月に発足し、その後1992年7月(私の誕生年月)に核兵器のみならず、生物・化学兵器を含む大量破壊兵器を運搬可能なミサイル及び関連汎用品・技術も対象となりました。
規制項目は、輸出令別表1に列挙される貨物のうち4の項に示される貨物、及び外為令別表に列挙される技術のうち4の項に示される技術が大量破壊兵器を運搬可能なミサイル及び関連汎用品・技術として輸出管理の対象となっている。
4.ワッセナー・アレンジメント(WA)
1994年3月末に、ココム(対共産圏輸出統制委員会:旧共産圏諸国に対する戦略物資統制のための枠組み)が解消されたことを踏まえ、1995年12月、新たな輸出管理体制の設立について関係国間で政治的な申合せが行われ、1996年7月の設立総会をもって正式に「ワッセナー・アレンジメント(WA)」が発足しました。
なお、WAの名称は、設立のための協議が行われたオランダのワッセナー市にちなんで名付けられたとのことです。
規制項目は、輸出令別表1に列挙される貨物のうち5~15のの項に示される貨物、及び外為令別表に列挙される技術のうち5~15の項に示される技術が輸出管理の対象となっている。
参考:外務省-輸出管理レジーム まとめると下図の表になります。
該非判定や客観要件確認の結果、輸出許可申請が必要となった貨物や技術を輸出する場合、事前に経済産業大臣の輸出許可を取得しなければいけません。
輸出許可申請・・・貨物(モノ)を輸出する場合
役務取引許可申請・・・技術(情報等)を提供する場合
許可の難易度は、貨物の種類や仕向地、需要者により変わり、必要な書類や審査期間も異なります。
その他ご不明な点等ございましたらお気軽にご連絡ください。
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