
2020年3月に、神奈川県にある噴霧乾燥器のメーカーが外為法上の輸出管理規則(リスト規制)に違反するとして起訴されました。
その後、警視庁により同社社長ら幹部3名が「兵器転用できる噴霧乾燥機(液体等を粉末にする機械・スプレードライヤ)を中国へ不正輸出した」との外為法違反容疑で逮捕されました。
そして、この3名の方は長期にわたり拘留されましたが、初公判直前であった2021年7月に東京地裁は、「法規制に該当することの立証が困難」と突然、起訴を取り消し、公訴を棄却して刑事裁判は終了しました。
生物兵器製造に転用できるとして、スプレードライヤはリスト規制の対象になっていますが、国際ルール上、対象となるのは有害な微生物を全て殺菌できるスプレードライヤに限られます。
結論からいうと、同社のスプレードライヤでは全ての微生物を死滅させられず、国際ルール上はリスト規制品目に該当しません。
しかし、経済産業省の国際ルールの和訳に齟齬があり、警察・検察当局の捜査が恣意的であったことから起訴に至ったものの、その後、事実が判明し起訴が取り消されたものです。
メーカーは、リスト規制品目に該当するかどうかの該非判定を行ないますが、同社は輸出するスプレードライヤが非該当であると判定し、それゆえに経済産業大臣の許可を得ずに輸出したわけです。
しかし、その行為が法令違反として起訴されたものです。
結果的に同社の判定は正しかったわけですが、警察・検察当局は別の解釈(定置した状態で減菌または殺菌することができるので該当)により起訴に及んでいます。
起訴が取り消された後、同社側から、国に対してこうむった被害に対して民事の損害賠償訴訟が提起されています。
ここで輸出者にとって重要なことは、該非判定はメーカーが行うものであり、その判定の責任はメーカー・輸出者にあるということです(経済産業省や税関はその判定をしません)。
※例外として、他社から購入した貨物であっても、規制対象外であることが明らかであることが自社で判断できる場合は、自社の責任で判断し、必ずしも購入先から該非判定書を入手しなくてもよい。
したがって、もし判定が間違っていたら刑事責任を問われる可能性があるので、該非判定は相当慎重に行うべきです。
ちなみに、一般社団法人安全保障貿易センター・CISTECでは、該非判定支援サービスを提供しており、該非判定の検討結果として「該非判定検証証明書」を発行しています。
ただし、該非判定に必要な書類や資料はメーカー側より提供する必要があり、CISTECは提供された資料の範囲内で該非判定を支援するということに限られています。
※古物商で扱うような中古品(例:中古工作機械など)に関しては、サービスの提供をお断りしている場合があります。