
世襲による経営継承や従来型の新規就農だけではなく、新しい就農方式として、後継者不在農家の経営資産を、家族以外の第三者が一体的に引き継ぐ、いわゆる「第三者継承」による新規参入者が増えてきました。
地域農業の維持・発展が難しくなりつつある中、第三者継承の精度は2008年度から始まっています。
「e-MAFFについて」の項でも説明しましたが、従来の農地の一括相続が減り、農地の筆ごとに第三者への承継・賃借・売買が増えているということです。
後継者を確保していない経営体
農業従事者の高齢化が進む中で後継者確保の問題が顕在化しています2020年の農業センサスによれば全国の107万5700あまりの農業経営体のうち、
約7割の経営体が「5年以内にひきつける後継者を確保していない」と回答しており、農業を営む人の多くが後継者を確保していない状況にあります。
政府では2009年の農地法改正で、農地の権利取得や農地の貸借、農業生産法人要件などを見直し、続く2015年の農地法改正では、農地を所有できる法人の要件などが見直された。
さらに、2019年の農地法改正では、農地集積における支援や事務手続きの簡素化などが行われました。
事業承継の形態
農業の事業承継では、事業(経営)、財産、そして無形財産という大きく3つのものが引き継がれます。
その中で、事業(経営)の承継は、基本的には後継者への経営権の承継であり、作物栽培の技術や経験、取引先など「人」に依存する部分が大きくなります。
財産の承継は、事業用資産や資金等有形の資産を承継することで、農業の場合には、農地や耕作機械、家畜、樹木、運転資金や借入金等があります。
無形財産の承継とは、貸借対照表に記載されている資産以外の無形の資産を承継することで、理念や技術・ノウハウ、経営者が培ってきた信用、ブランドや商標などの知的財産などが含まれます。
農地法改正による法人の新規参入
農地法はもともと、農業を保護するために農地の所有や転用、売買などに規制を設けた法律でしたが、
後継者確保が問題となってからは、農地の流動性を高め、法人などが農業に参入しやすくなる規制緩和が求められていました。
2009年の改正により、貸借であれば、企業やその他の法人であっても全国どこでも参入が可能となり、
農地を利用して農業経営を行うことができるリース法人は、2020年12月現在で3867法人まで増加し、改正前の約5倍のペースで増加しています。
さらに最近では、農地所有適格法人(農地を買うことができる法人)による参入も増えています。
この農地所有適格法人の要件※としては、
①法人形態要件
②事業要件
③構成員・議決権要件
④役員要件
が規定されており、この4要件をすべて満たす必要があります。
農地に関する権利取得の許可申請手続きの中で、要件の審査が行われ、権利取得後も要件を満たし続けなければなりません。
※農地所有適格法人の要件(2016〈平成28〉年4月1日以降)
①法人形態要件
農業組合法人、株式会社、持分会社であること。
②事業要件
その法人の主たる事業が農業であること。
③構成員・議決権要件
1.その法人に農地などについて所有権もしくは使用収益権(賃貸・使用貸借による権利)を提供した個人
2.法人の行う農業に常時従事する者
3.地方公共団体
4.法人に農作業の委託を行っている個人
5.農協 など
※上記の者の議決権の合計が総議決権の過半数を占めること(株式会社以外は上記に該当する者が総社員数の過半数を占めること)
④役員要件
1.法人の常時従事者である構成員が、理事等の数の過半数を占めていること。
2.法人の理事等または使用人のうち、1人以上の者がその法人の行う農業に必要な農作業に年間60日以上従事すると認められる者であること。