米国法に基づく許可要否の判定方法①


EARの構成や統合リストの検索方法についてはこちらで解説しました。

 

では実際に、EARに基づく該非判定はどのようにすればいいのか解説していきます。

 


 

日本とアメリアでの該非判定方法の違い

 

実は、米国法を知る際にもう一つ重要なことがあります。

 

それは、米国法下の管理では、リスト規制に該当してもまだ判定しなければいけないことがあるという点です。

 

日本においては、該非判定作業は輸出管理の要であり、リスト規制該当であれば、包括許可や例外の適用ができない限りはすべて許可申請を要します。

 

しかし、アメリカでは、リスト該当の品目であっても、許可要否を判断するさらなる判定ステップがあるのです。

 

よって、米国法の実務の場合は、該非判定ではなく、「許可要否の判定」という理解のほうがいいでしょう。

 

まず、下の図に米国での該非判定の流れを示しました。

 

 

 

ここで、アメリカの輸出管理②ECRAの下方で解説した「ECCN」の構成を下の5桁の数字とアルファベットで解説します。

※ECCNとは、5桁の数字とアルファベットから成り立っており、それぞれの数字とアルファベットには意味があります。

 

”4A003”

 

  内容
1桁目 EARのカテゴリー(0~9までのいずれか)
2桁目 品目の形態(A~Eまでの5つのアルファベットで分類)
3桁目 規制理由(当該品目が何故規制されているかがわかる)
4桁目 当該品目の規制が、国際レジームに基づくものか、米国独自規制であるかを識別
5桁目 品目ごとに割り当てられた通し番号

 

 


 

 

”4”・・・1桁目(EARのカテゴリーナンバー)

 

(核物質,核施設・装置及び)その他 0A502:ショットガン
材料,化学物質,細菌,有毒物質 1C005:超電導材
材料加工 2A001:ベアリング
エレクトロニクス 3A001:半導体
コンピュータ 4A003:ディジタル計算機
通信及び情報セキュリティ 5D002:暗号ソフト
センサー及びレーザー 6A008:レーダシステム
航法装置及び航空電子 7A003:慣性航行装置
海洋技術 8A001:潜水艦
航空宇宙及び推進 9A001:ガスタービンエンジン

 

 

まづ上表の0~9までのEARの構成(CCLのカテゴリー)を知るために、下の表にまとめました。

 

Category 0 Nuclear Materials Facilities & Equipment 核物質、核施設・装置及びその他
Category 1 Materials Chemicals Microorganisms and Toxins 材料、化学物質、細菌及び毒素
Category 2 Materials Processing 材料加工
Category 3 Electronics Design Development and production エレクトロニクス
Category 4 Computers コンピュータ
Category 5 Part 1 Telecommunications

Part 2 Information Security

通信及び情報セキュリティ
Category 6 Sensors and Lasers センサー及びレーザー
Category 7 Navigation and Avionics 航法及び航空電子
Category 8 Marine 海洋関連
Category 9 Aerospace and Propulsion 航空宇宙及び推進

 

 

CCLの分類と輸出令別表第1を比べたものを下表に示します。

 

項番 輸出令別表第1項番 カテゴリー CCL
1の項 武器   武器輸出管理法及び規則
2の項 原子力関連   各カテゴリーに分散
3の項 生物兵器/化学兵器   各カテゴリーに分散
4の項 ミサイル関連   各カテゴリーに分散
5の項 先端材料 材料、化学物質、細菌及び毒素
6の項 材料加工 材料加工
7の項 エレクトロニクス エレクトロニクス
8の項 コンピュータ コンピュータ
9の項 通信 通信及び情報セキュリティ
10の項 センサー・レーザー センサー及びレーザー
11の項 航法関連 航法及び航空電子
12の項 海洋関連 海洋関連
13の項 推進装置 航空宇宙及び推進
14の項 その他   各カテゴリーに分散
15の項 機微品目   各カテゴリーに分散

 


 

”A”・・・2桁目(品目の形態)

装置,アッセンブリ,コンポーネント 5A002:暗号用の装置, アッセンブリ,IC等
装置,アッセンブリ,コンポーネント 5B002:暗号用の試験,検査, 製造装置
材料 6C002:光学センサーの材料
ソフトウェア 5D002:暗号ソフトウェア
テクノロジー 5E002:暗号技術
6E001:センサー・レーザーの開発技術

 


 

”0”・・・3桁目(規制理由)

3桁目 分類の中身
国家安全保障規制(NS) 4A001⇒耐熱及び耐放射線のコンピューター
国家安全保障規制(NS) 3A101⇒ミサイル用電子装置
核拡散防止規制(NP) 6A226⇒圧力センサー
化学・生物兵器関連拡散防止規制(CB) 2B351⇒有毒ガスモニタリングシステム、検出装置
商務省が国家安全保障又は外交政策上、規制を要すると決定した品目
(さらに最近では、USMLから移管された衛星品目や武器品目も含まれる)
0X521(エマージング品目)

9A515⇒衛星0A502⇒ショットガン(エマージング品目とは、将来的には規制を要することになるかもしれないが現時点ではリスト規制対象外のもののこと。日本にはない規制)
商務省が国家安全保障又は外交政策上、規制を要すると決定した品目
(さらに最近では、USMLから移管された衛星品目や武器品目も含まれる)
国務省から移管された武器品目が「600番台品目」と呼ばれる所以。
9A610⇒軍用機
対テロ(AT)、犯罪防止(CC)、地域安定(RS)、ショートサプライ(SS)、国連制裁(UN)等、主に米国の独自規制 4A994⇒パソコン

AT:Anti-Terrorism(対テロ規制)

CC:Crime Control(犯罪防止規制)

RS:Regional Stability(地域安定規制)

SS:Short Supply(不足物資規制)

UN:United Nations Sanction(国連制裁)

 


 

”0”・・・4桁目(独自規制の識別)

米国独自規制 9A990:ディーゼルエンジン,トラクター
9以外 多国間規制 7A116:ミサイル用飛行制御システム

 


 

”3”・・・5桁目(通し番号)

 品目ごとに割り当てられている通し番号。

※ただし、カテゴリー5(通信/情報セキュリティ)では、5桁目の数字が、「1」の場合には通信関連の品目であり、「2」の場合には暗号関連の品目となっています。

 

 


 

次項では、規制理由と規制レベルを確認方法を解説します。