軍事的に使用可能なミリタリースペックとは


AIや量子コンピュータ、バイオなどあらゆる分野に欠かせない最先端の半導体ですが、そのスペックでよく使われる分類・格付として、「民生用コマーシャルスペック」、「産業用インダストリアルスペック」、「軍規格ミリタリースペック」、「航空宇宙エアロスペーススペック」

などがあります。

 

使用目的や環境によって同じ機能の部品でも求められる耐久性などが変わってきます。

温度や電圧など動作範囲が変わってきます。

「一般家庭で使われている製品に組み込まれる半導体」と「宇宙や砂漠など過酷な状況下で使われる半導体」では当然求められる精度や耐久性が大幅に変わってきます。


ミリタリースペックとは?

そもそもミリタリースペックとは、米国の国防総省が制定する米軍が調達使用する物資への条件を満たしている製品の総称です。

この米軍仕様は、

Military Specification(規格)

Standard(標準)

Handbook(参考)

などが定められ、世界中で権威ある規格として非常に有名です。

 

 

制定されている規格番号が「Mil」で始まることから、「MIL規格」や「MILスペック」「MIL仕様」などと呼ばれています。

国防省のドメインも「.mil」でMilitaryからきています。

1990年代以降、「MIL規格」は順次廃止見直しが進められ、現在では、「JEDEC規格」へ移行・統合が進んでいるようです。

このミリタリースペックと言うのは、民間のコンピューターや通信機器のスペックよりもはるかに厳しいものが課せられています。

当然ですが、この事業部で働く人間は、軍関係のカスタマーの情報は一切漏らしてはいけません。

 

兵器などにも使用される可能性がある軍用の半導体は、誤作動が起こる危険を限りなく低減させるために、通常、最先端のものは採用されず、いわゆる枯れた技術を採用され、しかも高いスペックを実現するために通常の半導体ビジネスからかなり外れたビジネスの性質を持っています。

例えば、非常に厳しいスペックを満たすために1枚のシリコンウェハーからまず1個のチップしか取れない場合などもあります。

その場合はかなり高い単価になります。

 

半導体ビジネスは基本的に量を追求するキャパシティのビジネスですので、歩留まりを非常に気にするわけです。

結果的にはあまり良いビジネスとは言えませんが、国防ですのでいくら出しても良いということになります。