
今回は、企業が海外と取引を行う際に欠かせない「輸出管理」における重要なプロセスの一つ、「取引審査」について解説します。
この取引審査ですが、輸出管理において、該非判定、出荷管理と合わせて輸出管理の三本の矢と呼ばれるほど大事な内容になります。
「取引審査って具体的に何をするの?」
「なぜそんなに重要なの?」
という疑問をお持ちの方にもわかりやすくお伝えします。
輸出管理とは?
輸出管理とは、ざっくりいうと、企業が製品や技術を海外に輸出する際に、国際的な安全保障や平和の観点から、輸出先や取引内容が適切であるかを確認・管理する仕組みです。
日本では「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に基づいて規制が行われており、軍事転用の恐れがある製品や技術、または懸念国・懸念用途との取引には、経済産業省の許可が必要になることもあります。
取引審査とは何か?
取引審査とは、輸出先や取引相手、取引内容を事前に確認・評価する社内プロセスです。
具体的には次のような観点で審査を行います:
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相手先(取引先)は安全な企業か?
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輸出する製品や技術に規制対象となるものが含まれていないか?
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用途は平和的か?軍事転用のおそれはないか?
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最終仕向地や仲介業者に問題はないか?
このような確認を通して、法令違反や制裁対象との不適切な取引を未然に防ぐことができます。
なぜ取引審査が重要なのか?
取引審査は、単に法令遵守のための形式的な作業ではありません。
実際に、以下のようなリスクを回避するための極めて重要な業務です。
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経済産業省の許可を受けずに輸出した場合、企業や担当者が刑事罰の対象になる可能性があります。
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一度違反すると、信用の失墜や取引停止、社名公表などの重大な影響が生じます。
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米国など他国の輸出規制にも抵触する場合、国際的な制裁リスクもあります。
そのため、企業として輸出管理体制を整備する上で、取引審査は核となるプロセスです。
輸出管理内部規定(CP)取得における「取引審査」の必須性
多くの企業では、輸出管理に関する「社内規定(コンプライアンス・プログラム:CP)」を策定しています。
そしてこの社内規定を経済産業省から正式に認められるためには、「適切な取引審査体制」が構築されていることが必須条件となります。
たとえば、次のような点がチェックされます:
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審査項目・手順が明文化されているか
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審査記録が適切に保存されているか
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審査に関与する部署・担当者が明確になっているか
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定期的な見直しや教育が実施されているか
これらが社内でしっかり運用されていることが、「輸出管理に真剣に取り組んでいる企業」としての信頼を得る第一歩となるのです。
まとめ
輸出管理における取引審査は、「安全保障」と「企業リスク管理」の両面から見て、非常に重要な役割を担っています。
そして、輸出管理内部規定(コンプライアンス・プログラム)の取得・運用においても、取引審査は欠かせない基盤です。
これから輸出管理体制の整備を進める企業の皆さんは、まずはこの「取引審査」の重要性を社内で共有し、明確なルール作りと運用体制の構築から始めてみてください。