
近年、農業の新しい形として注目されているのが 「農地所有適格法人」 です。
かつては「農業生産法人」と呼ばれていましたが、2016年の農地法改正によって名称が変更され、より多様な事業者が農業に参入しやすくなりました。
また、トヨタやNTTなど一部の大企業でも農業へ参入するニュースや記事も多くなりました。
農地を持ちたい、農業を事業として展開したいと考える法人にとって、この制度は大きなチャンスとなるのではないでしょうか。
農地所有適格法人のポイント
農地所有適格法人とは、法人でありながら農地を所有し、農業経営を行うことができる仕組み です。
日本では原則として、農地の所有は農業従事者に限られています。
しかし、農業法人として一定の条件を満たせば、法人として農地を取得し、事業として農業を展開することが可能になります。
では、どのような法人が「農地所有適格法人」として認められるのでしょうか?
以下に、具体的な要件を詳しく解説します。
農地所有適格法人の要件(条件)
① 事業内容の要件
農地所有適格法人の 売上の過半数は農業関連でなければなりません。
つまり、農業以外の事業も行うことは可能ですが、中心はあくまでも農業である必要があります。
✅ OKな例
✅ 農業(米・野菜・果樹などの生産)をメインにしながら、農産加工品の販売も行う
✅ 農業と観光を組み合わせた「観光農園」を経営
❌ NGな例
❌ メインの事業がITや不動産業で、農業は副業的に行う
❌ 飲食店や小売業をメインにし、少しだけ農業を行う
農業を核としたビジネス展開が求められるため、他の業種との組み合わせを考える場合も「農業が主軸になっているか」が重要になります。
② 出資者(株主)の要件
法人の議決権の過半数(50%以上)は、農業に従事している個人や法人が持つ必要があります。
これは、農業経営をきちんと行う法人であることを確保するためのルールです。
近年の改正により、一般企業も農地所有適格法人に出資できるようになりましたが、出資割合には制限があるため、完全な子会社として農業法人を設立することはできません。
③ 役員の要件
法人の役員(取締役など)の 過半数は農業に常時従事している必要があります。
例えば、取締役が4名いる場合、そのうち2名以上は農業に関わる業務を担当していなければなりません。
企業が農業に参入する際には、農業経験のある人材を確保することが成功のカギとなります。
農地所有適格法人のメリット
1.法人として農地を取得できる
通常、企業や法人は農地を取得することができません。
しかし、農地所有適格法人としての要件を満たせば 法人名義で農地を取得し、経営することが可能 になります。
これにより、農業を事業の一環として計画的に拡大することができます。
2.農業経営の効率化・大規模化が可能
法人化することで、農業経営をより効率的に進めることができます。
例えば…
✅ 組織的な経営が可能に
農業は個人経営が多いですが、法人なら複数の従業員や専門家を雇い、分業化できます。
✅ 資金調達がしやすい
法人なら銀行融資や補助金の申請がしやすく、大規模な設備投資も可能に。
✅ 事業の継続性が高まる
個人経営だと後継者問題が発生しがちですが、法人なら経営を引き継ぎやすくなります。
3.補助金や支援制度の活用が可能
農業法人向けの補助金や支援策は多数あります。
法人として農業を行うことで、こうした支援制度を活用しやすくなるのも大きなメリットです。
農地所有適格法人のデメリット
1.要件を満たし続ける必要がある
一度「農地所有適格法人」として認められても、要件を満たさなくなると農地を手放さなければならない可能性があります。
特に「農業従事者の割合」や「事業内容」には注意が必要です。
2.運営の手間が増える
法人化すると、個人経営と比べて以下のような運営の手間が発生します。
✅ 会計処理や税務申告が複雑になる
✅ 役員構成の維持が必要(農業従事者の割合の管理)
✅ 企業としての経営管理が求められる
しっかりとした運営体制を整えることが重要です。
農地所有適格法人を活用するには?
農業に新規参入を考える企業や団体、すでに農業を営んでいるが法人化を検討している方にとって、農地所有適格法人は大きな可能性を秘めています。
ただし、要件を満たす必要があるため、事前にしっかりとした計画を立てることが成功のカギとなります。
もし法人で農業を始めたい、農地を取得したいと考えているなら、農地所有適格法人の制度を上手に活用することで、持続可能な農業経営が可能になります。
興味がある方は、まずは農業委員会や専門家に相談し、具体的なプランを立ててみることをおすすめします!