
認定新規就農者になると、以下のようなさまざまな支援が受けられるようになります。
自治体によって制度が異なる場合があるので、市区町村の担当部門で確認することをお勧めします。
また、認定新規就農者でなくても、認定新規就農者を雇用している農協や農事組合法人等にとっても税制面で優遇される制度があるの
で、農業を始めようと考えている方、すでに始めている方も、是非一度検討してみるのもいいかもしれません。
全国新規就農相談センターによると、2021年における新規就農にあたって必要な資金の平均金額は474.4万円となっています。
就農前にこれほどの貯金を作るのは多くの人にとって困難な道のりとなるようです。
就農に向けた補助金新規一覧
以下の表に補助金・助成金の一覧をまとめてみました。
【補助金・助成金】の種類 |
主な要件 |
最大交付金金額 |
農業次世代人材投資資金〈就農準備資金〉 | 49歳以下、1年以上研修 | 150万円/年 |
農業インターンシップ | 金銭の授受無し | 2.8万円/2年 |
移住支援金 | 東京圏外に移住 | 100万円 |
農業次世代人材投資資金〈経営開始資金〉 | 49歳以下、独立・自営就農 | 150万円/年 |
青年等就農資金 | 49歳未満、17年以内に返金 | 3700万円/年 |
経営発展支援 | 49歳以下の認定新規就農者 | 1000万円 |
起業支援金 | 社会的事業の起業 | 200万円 |
強い農業・担い手づくり統合総合支援交付金 | 成果目標の基準を満たす | 20億円 |
雇用調整助成金 | 生産量や売り上げの減少 | 8490円/年 |
キャリアアップ補助金 | 賃金の算出方法の明示 | 80万円 |
農耕地作条件改善事業 | 受益者数が農業者2者以上 | 500万円 |
環境保全型農業直接支払交付金 | 環境保全に貢献した事業 | 200万円/年 |
ものづくり補助金 | 持続的な成長のの見込み | 3000万円 |
IT導入補助金 | IT導入支援事業者として登録 | 450万円 |
農産物等輸出拡大施設整備事業 | 輸出事業計画の画策 | 数億円 |
以下に代表的な補助金・助成金の解説をします。
農業次世代人材投資資金(就農準備資金・経営開始資金)
「次世代を担う農業者となることを志向する者に対し、就農前の研修を後押しする資金(2年以内)及び就農直後の経営確立を支援する資金(3年以内)を交付」する制度として設けられているのが、農業次世代人材投資資金です。
就農時の年齢が原則49歳以下であることが条件で、前年の世帯所得が原則600万円以下の場合に対象となります。
「就農準備資金」は研修期間中の研修生が交付の対象となります。最長2年間、月額12万5000円・年間最大150万円が交付されます。
「経営開始資金」は認定新規就農者が対象です。経営開始資金として最長3年間に渡り、月額12万5000円・年間最大150万円が交付されます。
経営発展支援
これは農林水産省によって行われる、農業経営をより効果的に行うための支援を提供する事業です。
機械・施設等導入にかかる経費の上限1000万円を受け取ることができます。
この制度では上限1000万円のうち、都道府県が認定新規就農者に対して機械・施設等の導入を支援する場合、都道府県支援分の2倍
を国が対象者に支援します。
(例えば、国1/2、県1/4、本人1/4補助という割合で負担することになります。)
【主な要件】
1.就農時の年齢が49歳以下の認定新規就農者である
2.独立・自営就農である
3.本人負担分の経費は融資機関から融資を受ける
青年等就農資金(無利子融資)
「青年等就農資金」は新規就農者を対象とした無利子の融資になります。
国の出資金をもとに、株式会社日本政策金融公庫が融資に関する審査及び諸手続きを行っています。
資金の用途は幅広く、農業生産用の施設・機械の整備、家畜の購入費、果樹や茶の新植・改植費や、長期運転資金などに使うことができます。
借入限度額は3700万円(特認限度額1億円)、返済期間は17年以内(うち据置期間5年以内)となっています。
起業支援金
都道府県が、地域の課題解決に資する社会的事業を新たに起業等する方を支援するものです。
都道府県が選定する執行団体が、計画の審査や事業立ち上げに向けた伴走支援を行うとともに、起業等に必要な経費の2分の1に相当する額を交付します。
最大200万円を受け取ることができます。
事業分野としては、子育て支援や地域産品を活用する飲食店、買い物弱者支援、まちづくり推進など地域の課題に応じた幅広いものが想定されます。
【主な要件】
1.社会的事業の起業を行うこと
2.起業地の都道府県内に居住していること、又は居住する予定であること
起業支援金の対象地域は、各都道府県や自治体によって異なります。
東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県以外の道府県が対象地域となりますが、これらの地域の中でも都市部へのアクセスが悪い”条件不利地域”(奥多摩町や小笠原村など)は対象となります。
農地利用効率化等支援交付金
「農地利用効率化等支援交付金」地域が目指すべき将来の集約化に重点を置いた農地利用の姿の実現に向けて、目標地図に位置付けられた者が経営改善に取り組む場合、必要な農業用機械・施設の導入に支援が受けられる制度です。
300万円を上限(一定の条件を満たして経営面積の拡大を目指す場合は600万円への引上げ有り)とし、補助率は事業費の10分の3以内となっています。
経営所得安定対策(ゲタ・ナラシ)
経営所得安定対策として、ゲタ・ナラシ対策があります。
「ゲタ対策」は諸外国との生産条件の格差により不利がある国産農産物の生産・販売を行う農業者に対して、「標準的な生産費」と「標準的な販売価格」の差額分に相当する交付金を直接交付する制度です。
「ナラシ対策」はコメ及び畑作物の農業収入全体の減少による影響を緩和するための制度です。
農業者のコメ、麦、大豆等の当年産の販売収入の合計(当年産収入額)が標準的収入額を下回った場合に、その差額の9割が補てんされます。
補てんを受けるには、農業者からの積立金の拠出が必要となります。
農業経営基盤強化準備金
経営所得安定対策等の交付金を活用して、計画的に農業経営の基盤強化(農用地、農業用の建物・機械等の取得)を図る取り組みを支援するものです。
農業経営改善計画などに従い、経営所得安定対策等の交付金を農業経営基盤強化準備金として積み立てた場合は、この積立額を個人は必要経費に、法人は損金に算入できます。
さらに、農業経営改善計画などに従い、積み立てた準備金を取り崩したり、受領した交付金で、農用地、農業用の建物・機械等を取得したりした場合、圧縮記帳できます。
適用を受けるためには一定の方法で記帳し、青色申告により確定申告(初年は税務署に事前に届出)をする等の条件があるので注意してください。
農協等向け新規就農者税制
農協等が機械設備や農業用ハウスなどの償却資産を取得して人・農地プランの中心経営体に位置付けられた認定新規就農者に利用させる場合、その固定資産税が軽減される制度です。
農業協同組合のほか、中小企業等協同組合(事業協同小組合、企業組合を除く。)、農業協同組合連合会、農事組合法人が対象となります。
認定新規就農者への直接の支援ではありませんが、この制度があることによって認定新規就農者は初期投資にかかる負担が軽減されます。
また、農業協同組合や市町村において地域ぐるみで新規就農者の受入体制づくりが進むことも期待されています。
農耕地作条件改善事業
農地の生産条件を改善し、農業生産の効率化や持続可能性を高めるための支援です。
一般的には対象経費の 50%~75% 、また一部の特定事業では 100% の補填率の補助金が交付される可能性があります。
【主な要件】
1.総事業費200万円以上
2.農業者数2者以上
3.農地中間管理事業を重点的に実施する区域である
畦畔除去による区画拡大や暗渠排水を改善する地域内農地集積型や、GNSS基地局の設置を支援するスマート農業導入推進型、「田んぼダム」の実施に必要な基盤整備を支援する水田貯留機能向上型など多くの種類の事業内容があるのでチェックしてみましょう。
ものづくり補助金
経済産業省による、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資
等を支援するものです。
新製品・新サービスの開発や設備投資のために使われる補助金が対象となっています。プロジェクトの規模や内容に応じて100万円〜
3000万円が交付されます。
【主な要件】
1.中小企業基本法で定められた中小企業や小規模事業者である
2.補助金を活用して事業を持続的に成長させる見込みがある
3.補助金だけではなく、自己資金も確保している
IT導入補助金
中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツールの導入を支援する補助金です。
事業のデジタル化を目的としたソフトウェアやシステムの導入だけでなく、インボイスの対応やセキュリティ対策なども支援の対象とな
っています。
最大450万円の補助金を受け取ることができます。
【主な要件】
1.IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請する
2.日本国内で法人登記がされてある
3.地域別最低賃金を上回っている
事業によって上限が異なりますが、農業は資本金・出資金の総額が3億円以内、あるいは従業員が300人以内であればIT導入補助金
の申し込みが可能となります。
このIT導入補助金を使ってスマート農業を始めてみてはいかがでしょうか...!?
余談ですが、農業関係の補助金や助成金なのだから、農林水産省のHPを主に調べたりすることもあると思いますが、農業に関するものがすべて農林水産省が管轄しているわけではなく、農業従事者も労働者です。
なので、例えば厚生労働省の持続化補助金のように、他の省や自治体独自で補助金や助成金を用意しているところもありますので、色々調べてみることをお勧めします。
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