農業金融の動向~日本政策金融公庫の取り組み~


日本政策金融公庫(略称:日本公庫)は2008年10月に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫を統合して設立された政府全額出資の政策金融機関です。

 

農林漁業金融公庫の業務を引き継ぎ、国の政策に基づいて農業経営の支援に当たっています。

 


 

 

制度融資と民間金融機関の対応

日本政策金融公庫の農林漁業者向けの2021年度の融資実績は約5007億円で、このうち農業が占める割合は全体の81.6%の4084億円、次いで加工流通が10.3%の514億円、以下、漁業219億円、林業190億円となっています。

 

 

また、農業のうちスーパーL資金が3012億円、その他が、1071億円となっています。

 

 

日本政策金融公庫では、コロナや自然災害などのセーフティネット機能の発揮や、コンサルティング融資活動の推進、財務分析による現状と課題の共有、協調融資や委託貸付など、農林漁業分野における民間金融機関連携の推進を図っています。

 

 

一方、民間金融機関の農業に対する取り組みも活発化しています。

 

 

近年、農業経営の大規模化や農商工連携など、農業の業態そのものが大きく変化してきており、農家経営全般での経営資金や設備投資、新商品開発の研究費など多様になってきました。

 

 

スーパーL資金:農業経営基盤強化資金で、認定農業者向けの農業経営改善のための資金。農業近代化資金では十分な対応ができない場合に日本政策金融公庫が融資する資金。

 


 

 

事業性評価融資

日本公庫は、担保や保証人に必要以上に依存することなく農業者の事業性を評価した融資に積極的に取り組んでいます。

 

 

日本公庫独自の「経営ビジョンシート」を活用し、農業者の経営能力や経営戦略を積極的に評価する「事業性評価融資」を行っており、最近では、農業経営を新たに開始する新規就農者向けの「青年等就農資金」の融資実績を増やしてきています。

 

 

農業者(個別経営体)が経営を維持・発展するために利用する資金や、農業基盤整備資金、担い手育成農地集積資金等も取り扱っています。

 

 

また、食品産業分野での設備投資にも対応しています。

 


 

 

セーフティネットなど

近年の食品産業分野への融資では、食品製造業者や食品流通業者における衛生管理意識の高まりからHACCP導入のための設備投資の融資が増えています。

 

 

また、台風や長雨などの自然災害により一時的に経営が悪化した農林漁業者等への支援策として、相談窓口を速やかに設置するとともに、融資や返済条件の緩和などにも対応しています。

 

 

さらに、以前紹介した「人・農地プラン」に基づき、競争力・体質強化に向けて意欲的に生産拡大などに取り組む農業者等への支援を目的として、貸付当初五年間の金利負担が実質無利子となる制度を設けています。

 


 

 

構造改革を反映して

日本公庫の農林水産事業での2017年(平成29年)度上半期の実績は、担い手農業者などの設備投資を積極的に支援した結果、前年同期比139%と大幅に伸びています。

 

 

担い手による農地の集積や飼養頭数の拡大など、農業分野を中心に構造改革が進んでいることを反映した結果になっています。

 

 

営農類型別の融資件数では、全体の約7割を占めている種目のうち、野菜が一番多く、次いで稲作になっています。

 

 

畜産は、件数こそ全体の3割ですが、営農類型別の融資額では、一件当たりの融資額が大きいために全体の約7割を占めています。

 

 

近年は、規模拡大や六次産業化、輸出といった攻めの経営展開に取り組む農業者への融資や、新たに農業経営を開始する新規就農者向けの青年等就農資金の融資が増えてきています。