
「農水省の7日の発表によると、4月21日~27日に全国のスーパーで販売されたコメ5キロあたりの平均価格は、4233円だった。前の週より12円高く、17週連続の値上がりで過去最高値を更新した。」
といったニュースを最近はよく耳にされるのではないでしょうか。
米の価格はいつ安定するのか。
例えば、少し前に1ドル162円という急激な円安が進行したことが話題となり、SNSなどでは「このまま1ドル200円まで行く可能性もある」などと懸念の声がありましたが、その際、日銀による為替介入や政治的な国際情勢により、それ以上円安が進行することはありませんでした。
今回、この米の価格の急激な上昇、一年前に比べて倍ほどに値上がりしています。
日本人なら誰でも安定的に安く食べられていた米も、政府は価格を下げることさえできないのでしょうか、、、?
実質的な減反政策はなくなったものの、JAによる生産計画や数量調整を農家に通知して、急激な生産量の増加を抑制し、米の価格と供給量を安定させてきていたにもかかわらず、、、。
米の最低輸入義務(GATTウルグアイラウンド)
1993年、日本では記録的な冷夏による深刻な米不足がありました。
令和の米騒動ならぬ、”平成の米騒動”とも呼ばれ、小売店の店頭から米が消えるといった混乱が発生し、同時に普段は米を扱わない業者までもが米の販売をするなどのケースも発生しました。
低温及び長雨による日照不足のため、記録的な生育不良から深刻な米不足となり、米価格も上昇を始めた。
国産米の根強い人気もあって、市場で買いだめと売り惜しみが発生したため当時の細川内閣では、タイや中国、アメリカなどから緊急輸入を行うと発表しました。
私自身、幼少期のころ、細長くてパサパサした米(タイ米)を嫌々ながら食べさせられていたことを今でも思い出せます。
当時の世界の米の貿易量は1200万トンでしたが、そのうちの20%にあたる米を日本が国内産並みの価格で調整したため、国際的な価格高騰を招き、日本政府は段階的に米の輸入を解禁せざるを得ず、最終的に米の貿易自由化を受け入れることになりました。
日本では、GATTウルグアイラウンド※1の最終合意により、米の部分開放を受け入れることになりました。
6年間の関税化猶予条件の条件として、米の最終輸入義務(ミニマムアクセス※2)を受け入れたのです。
当時の政府が米の部分開放を決断した背景には、工業製品の輸出によって経済成長遂げた日本は、自由貿易の恩恵を受けてきたはずなのに、米だけは、”聖域”として市場を閉ざし続けていることは、国際世論に対して説得力を持たないという判断がありました。
※1GATTウルグアイラウンド:1986年にウルグアイで交渉開始が宣言された、GATT(関税貿易一般協定)の多角的貿易交渉のこと。
※2ミニマムアクセス米:日本が高関税を課して輸入を制限する代わりに、最低限輸入しなければならない量の外国米。政府米として扱われる。
新食糧法の制定へ
米騒動と米の輸入受け入れを契機に、日本の米に対する政策は大きく転換していきます。
食糧管理法は1995年に廃止され、新しく食糧法が制定されました。
政府は、非常時に備えた備蓄米の管理や、米殻の価格の安定、輸入米の管理などを担当するだけになり、農家が作る米の流通方法は計画流通米と計画外流通米の2通りになりました。
食糧法の施行により、農家は米などの作物を自由に販売できるようになりました。
米を自由に流通させることで、日本国内の農家の競争力・対応力の向上を図るという狙いがありました。
一方で政府による管理は緩和されることになりました。
備蓄米については、米騒動の経験から不作の時でも安定的に米を供給できるように、政府が農協などから米を買いつけて備蓄米として保管します。
そして、一定期間が過ぎると新しい米と交換され、蓄えてあった米は販売業者に卸されて、新米よりも安い価格で一般に販売される、
という仕組みです。
この食糧法に関しては別項で、改正法も交えて解説します。
JA全農での過剰在庫&消費需要の低下
少し前のコロナ禍による米の需要消失の影響も大きく、過大な流通在庫が生まれました。
外食需要の大幅な減少などで、米の在庫が大きく膨れ上がり(2021年4月末の在庫は前年同時期より27万トン増加)、米の価格暴落に歯止めがかからなくなりました。
JA全農でも過剰在庫を抱えていることから市場価格は大暴落し、政府は36万トンの上乗せ減反を打ち出したものの受け入れられる数量ではなく、コロナ禍によるさらなる消費減少と相まって米価格の下落が危惧された。
この他、米については国内需給には必要のないミニマムアクセス米が毎年77万トンも輸入されています
国内消費量は30年間で3/4(25%減)にまで減少したにもかかわらず、見直しは行われず、バター・脱脂粉乳並みに不要なミニマムアクセス米の輸入数量を調整するなど、国内産米優先の米政策に転換する措置が求められています。
2018年以降、米農家は自身の判断で生産量を増やせるようになったのですが、急に多くの米農家が生産量を増やすようになると、米の生産量が需要大きく上回り、米余りの状態を招き、米の価格にも影響するため、
現在は自治体や農協などの団体が中心となり、米の生産量の目安を農家に提示して、急激な増産を回避するように調整しています。
ところがコロナ禍における外食需要の低下が決定打となり「米余り」状態が加速した。
そしてさらに、中高年世代の米消費の減少も顕著になってきました。