利用権設定とは


利用権設定とは

利用権設定とは、農業経営基盤強化促進化法に基づき、農地を貸したい農家と借りたい農家の間で農地の貸し借りを設定することです。

農地を貸し借りする方法には、主に以下の2つがあります。

1.農地法第3条の許可を受けた「賃貸借契約」

通常の賃貸借契約に基づく方法で、借り手が農地を利用する。

契約期間が終了しても、借り手の権利が継続する可能性がある

(「借地権」のような強い権利を持つため、貸し手が土地を取り戻しにくい)。

 

2.「利用権設定方式」による貸し借り(農地法第3条)

農業委員会に届出をすることで、簡単に農地を貸し借りできる。

  • 契約期間が満了すれば、自動的に土地が貸し手に戻るため、貸し手が安心して貸し出せる
  • 借り手にとっても、契約手続きが簡単で利用しやすい。

 

 

利用権設定の仕組み

  • 所有者(貸し手)が農地の利用権を設定し、一定期間貸し出す。
  • 農業委員会に届出をするだけで設定できる(許可不要)。
  • 期間が満了すると、利用権は自動的に消滅し、農地は元の所有者に戻る。
  • 貸し手・借り手の間で自由に契約内容を決められるが、農業委員会が間に入って調整を行うことも可能。

 

 


 

利用権設定のメリット

 

(1)貸し手(農地所有者)のメリット

農地を手放さずに貸せる(所有権は変わらない)
契約期間満了後に、自動的に農地が戻る(貸しっぱなしにならない)
手続きが簡単(農業委員会への届出だけでOK)
農地の有効活用ができる(遊休農地の発生を防ぐ)

(2)借り手(農業者・法人)のメリット

農地をスムーズに借りられる(賃貸借契約より手続きが簡単)
一定期間、安定して農地を利用できる
農地の登記が不要なので、負担が少ない
農業法人や新規就農者が利用しやすい

 

 


 

利用権設定の手続き

① 契約の合意

  • 貸し手と借り手が契約条件を決める(賃料、契約期間など)。
  • 自治体や農業委員会が仲介するケースもある。
  • 農地中間管理機構(農地バンク)を活用することも可能。

 

② 農業委員会への届出

  • 「農地利用集積計画」を作成し、農業委員会に届出。
  • 許可制ではなく届出制なので、スムーズに手続きが進む。
  • 必要に応じて農地バンクが調整・仲介。

 

③ 利用権の設定

  • 農業委員会が内容を確認し、利用権を設定。
  • 設定が完了すれば、借り手が農地を利用できる。

 

④ 期間満了後

  • 契約期間が終わると、利用権は自動的に消滅。
  • 貸し手が農地を取り戻し、次の契約を自由に決められる。
  • 継続利用したい場合は、再度利用権設定の手続きを行う。

 


 

賃貸借契約との違い

 

項目 利用権設定方式 賃貸借契約
許可 農業委員会への届出のみ 農業委員会の許可が必要
解除 期間満了時に自動終了 期間満了後も存続する可能性あり
登記 不要 必要(特に長期契約の場合)
目的 柔軟な農地貸し借りの促進 長期的な貸し借りを前提

 

賃貸借契約の場合、契約期間が終了しても借り手の権利が継続する可能性があり、貸し手が農地を取り戻しにくくなるケースがある。

一方で、利用権設定方式なら、契約期間終了時に自動的に貸し手に戻るため、安心して貸し出せる。

 

 


 

具体的な利用場面

(1)後継者がいない農地所有者が農地を貸す

⇒農業を続けられなくなったが、農地を手放したくない場合に、利用権設定で貸し出す。

(2)新規就農者が農地を借りる

⇒農地を持たない若者や移住者が農業を始めるために、利用権設定を活用。

(3)農業法人が農地を集約して大規模経営

農地バンクと連携し、利用権設定を活用して農地をまとめて借りる。

 

 


 

農地バンク(農地中間管理機構)との関係

繰返しになりますが、農地バンク(農地中間管理機構)とは、国や都道府県が設置した農地の貸し借りを仲介する機関です。

農地バンクを利用すれば、農地を貸したい人と借りたい人をマッチングし、スムーズに利用権設定が可能になります。

 

農地バンクのメリット

貸し手は安心して農地を預けられる(農地バンクが管理)
借り手は信頼性のある農地を借りられる
行政の支援を受けながらスムーズに契約できる

 


 

まとめ

利用権設定は、農業委員会に届出をするだけで農地の貸し借りが可能
契約期間満了後は自動的に貸し手に農地が戻るので安心
新規就農者や農業法人が農地を確保しやすくなる
農地バンクと併用すると、よりスムーズな貸し借りが可能

農地を貸したい・借りたい場合は、地元の農業委員会や農地バンクに相談するのがベストです!