
農地法第3条とは?
農地法第3条は、農地を「農地のまま」売買・貸借(所有権移転や使用貸借・賃貸借)する場合に適用される法律です。
この条文の目的は、農地が適正に利用され、農業経営が維持されるようにすることです。
1.第3条許可の必要性
農地を売買・貸借する場合、原則として農業委員会または都道府県知事の許可を受ける必要があります。
この許可を受けないまま契約を締結しても、その契約は無効となります。
(例)AさんがBさんに農地を売却する場合、第3条許可を得なければ売買契約は無効になります。
✅ 許可が必要なケース
- 農地の売買・贈与
- 賃貸借・使用貸借(無償で貸すこと)
❌ 許可が不要なケース
- 相続(農地法3条の適用外)
- 法人の合併などでの所有権移転
- 遺産分割や離婚による財産分与
2.許可権者
誰が許可を出すかは、農地の所在地や規模によって異なります。
-
農業委員会の許可
原則として、市町村の農業委員会が許可を行う。
地域農業の適正な発展を目的に、農業委員会が審査することになっています。
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都道府県知事の許可
例外として、複数の市町村にまたがる農地を取得する場合は、都道府県知事の許可が必要。
3.許可を受けるための要件
農地を取得(売買・貸借)するためには、以下の要件を満たす必要があります。
① 農地の適正な利用
- 取得者が農業を継続的に行う意欲と能力を持っていること。
- 農地を放置せず、適切に管理できること。
② 経営面積の基準(下限面積要件)
- 取得後の農地の面積が、都道府県が定める最低経営面積以上であること。
- 例)〇〇県では50a(5,000㎡)以上など。
- ただし、近年の規制緩和で、地域によっては「下限面積なし」になっていることもある。
③ 地域農業への影響
- その農地取得が、地域の農業振興に悪影響を与えないこと。
- 例えば、農地が細分化しすぎることや、農業従事者ではない者が取得することを防ぐ。
④ 周辺の農地との整合性
- 取得者がその地域での農業経営に適しているか。
- 近隣の農業経営に支障を与えないか。
4.許可を受けずに農地を売買・貸借した場合のリスク
もし許可を受けずに農地を売買や貸借してしまうと、以下のような問題が発生します。
❌ 売買契約・賃貸借契約が無効
- 許可のない取引は法律上無効となり、契約として成立しない。
- そのため、農地の登記もできない(所有権移転が認められない)。
❌ 行政処分の対象
- 違反した場合、行政指導や強制的な農地の返還命令が下される可能性がある。
5.申請手続きの流れ
実際に農地法3条の許可を申請する場合、以下のような流れになります。
1.申請書の提出
農業委員会(または都道府県知事)に申請書を提出。
申請者(農地を取得する側)が記入します。
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2.農業委員会での審査
農地の利用状況、取得者の農業経営能力を審査。
⇩
3.許可の決定
許可が下りると、売買契約・賃貸借契約が正式に有効となる。
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4.登記手続き(所有権移転)
許可後に登記を行い、所有権を取得。
6.農地転用との違い(農地法4条・5条との比較)
条文 |
内容 |
許可が必要なケース |
許可権者 |
農地法第3条 | 農地のまま売買・貸借 | 農地を「農地として」売買・貸借する場合 | 農業委員会(または都道府県知事) |
農地法第4条 | 自分の農地を宅地などに転用 | 自分の所有する農地を宅地や駐車場にする場合 | 都道府県知事(または農林水産大臣) |
農地法第5条 | 他人に売って転用 | 農地を売却し、買主が宅地や駐車場にする場合 | 都道府県知事(または農林水産大臣) |
農地法第3条は、あくまで農地を「農地のまま」取引するための許可であり、
農地を住宅地や商業地にする場合は、第4条・第5条の許可が必要になります。
7.最近の動向(規制緩和)
近年、農業従事者の減少や耕作放棄地の増加に伴い、農地法3条の規制が一部緩和されています。
- 下限面積要件の撤廃(都道府県の判断による)
- 法人による農地取得の緩和
- 新規就農者向けの特例措置
今後も農業政策の変化に伴い、規制が見直される可能性があります。
以下まとめますと、、
✅ 農地法第3条は、農地を農地のまま売買・貸借する際に必要な許可制度。
✅ 無許可で売買・貸借すると契約が無効になるため注意。
✅ 農業従事者や法人が取得する場合、一定の要件を満たす必要がある。
✅ 農地転用(宅地化など)する場合は、第3条ではなく第4条・第5条の許可が必要。
✅ 最近は規制緩和が進んでおり、新規就農者の取得ハードルが下がる傾向にある。
農地の売買や貸借を考えている場合は、事前に農業委員会に相談することが重要です!