AEO認定事業者


2001年9月の米国同時多発テロ以降、米国をはじめ、世界中で様々な貨物の安全管理が強化されていますが、その一つとして世界税関機構(WCO)が2006年にサプライチェーン全体における安全確保と貿易の円滑化を目的としてAEO認定事業者(Authorized Economic Operaters)制度のガイドラインを採択しました。

 

認定事業者とは貿易関連業者です。

 

荷主、利用運送業者、実運送業者通関業者など貿易に関わる事業者が一定の基準を満たしており、安全で経営的にも信頼できると政府が認めた場合は、これらの業者に簡易で迅速な手続きを提供すると言うのがAEO制度の趣旨です。

 

WCOのガイドラインをもとに欧州連合(EU)で、2008年1月からAEO制度が実施され、わが国でも同年4月から従来のAEO輸入業者、AEO倉庫業者に加え、通関業者や保税運送事業者も対象になり、貿易に関する業務を一通りカバーする格好で完結しました。

 

 

AEOとして認定する要件は6つありますが、重要なのは以下の3つです。

 

1.通関業の業務実績が3年以上あること。

2.過去3年間に法令の違反がないこと。

(これには関税・国税など税に関する違反で通告処分以上の処分を受けていない、通関情報違反で罰金刑以上を受けていない、その他の法令に違反して禁固刑以上の刑を受けていない、の3つのカテゴリーがあります)。

3.法令遵守(コンプライアンス)規則を定め、適正かつ確実に業務を遂行できること。

 

 

2024年7月1日時点でAEO事業者数は760者に達しています。

このうち、2制度認定者が153者、3制度認定者が7者あります。

 

 

A.特定輸出申告制度

輸出事業者が対象。

特定輸出者(AEO輸出者)については、貨物が置かれている場所、または、貨物の船積みを予定している港(空港)の所在地に関係なく、いずれの税関官署でも申告することが可能で、保税地域に貨物を搬入することなく、輸出の許可を受けることができます。

自社の倉庫などで輸出の許可を受けることが可能となり、税関審査・検査で自社のセキュリティー管理とコンプライアンスが反映されるため、迅速な船積みが可能となり、リードタイムや物流コストの削減が期待できます。

また、外国貿易船に積載したまま、検査及び輸出の許可を受けようとする貨物について、特定輸出申告を行う場合、本線扱い及び艀中(ほちゅう)扱い※の承認申請手続きが不要となります。
2024年7月1日時点で、特定輸出者は231者。


※艀中(ほちゅう)扱い・・・税関長の承認を受けて、貨物を保税地域に搬入せずに「はしけ」(艀)に乗せた状態で通関手続きを行う制度のこと

 

B.特例輸入申告制度

輸入業者が対象。

貨物のセキュリティ管理とコンプライアンスの体制が整備されたものとしてあらかじめ税関長の承認を受けた特例輸入者(AEO輸入者)については申告貨物が到着する前(保税地域に搬入される前)に輸入申告して許可を受けることができ、輸入申告と納税申告を分離し、貨物の引き取り後に納税申告(特例申告)をすることができます。

特例申告は輸入許可の日の属する月の翌月末日までです。

一ヶ月分の輸入申告に係る特例申告を取りまとめ一つの特例申告(一括特例申告)として提出することも可能です。

貨物の引き取りにあたっては、引き取り申告で納税に関する事項を申告する必要がないため、一般の輸入申告よりも少ない申告項目数で引き取り申告ができます。

2024年7月1日時点で、特定輸入者は105者。

 

C.特定保税承認制度

倉庫業者が対象。

セキュリティ管理法令遵守で承認を受けた保税蔵置場※の特定保税承認者(AEO倉庫業者)は、税関長へ届け出ることにより、保税蔵置場または保税工場を設置することが可能となるほか、届け出に係る保税蔵置場または保税工場について許可手数料が免除となります。

また、届け出に係る保税蔵置場などは一般の保税蔵置場の6年に比べて8年と許可期間が長くなり届出に係る帳簿保存期間が二年から一年に短縮されます。

2024年7月1日時点で、特定保税承認者は151者。


※保税蔵置場(ホゼイゾウチジョウ)・・・税関長が許可した、輸出の許可を受けた貨物、輸入手続が済んでいない貨物、日本を通過する貨物などを置くことができる場所のこと。

 

D.認定通関業者制度

通関業者が対象。

認定通関業者(AEO通関業者)は、貨物の蔵置場所に関わらず、いずれかの税関長に対しても輸出入申告をすることができます。

輸入者の委託を受けた輸入貨物について貨物の引き取り後に納税申告を行うこと(特例委託輸入申告制度)や、輸出者の委託を受けて特定保税運送者による運送を前提に保税地域以外の場所にある貨物について輸出申告(特定委託輸出申告制度)し許可を受けることができます。

これらの制度によってリードタイムとコストの削減が期待できます。


2024年7月1日時点で、認定通関業者は263者。

 

E.特定保税運送制度

運送業者が対象。

特定保税運送業者(AEO運送業者)は、ここの保税運送の承認が不要となるほか、特定委託輸出申告に係る貨物について、輸出者の委託を受けて保税地域以外の場所から直接船積み港まで運送することができます。

2024年7月1日時点で、特定保税運送業者は10者。