
「外国人が日本に在留するためには、どのような手続きが必要なんですか?」
こう問われたら、「ビザを取得しなければいけないんじゃないかな…?」と思われる方が多いのではないでしょうか。
確かに、ビザの取得は重要ですが、それ以上に、ビザを取得した後に更なる手続きをしなければ日本に適法に在留することはできないのです。
更には、ビザを取得するための前段階で、いわば「ビザをより確実に取るためのお膳立て」をするような便利な制度もあるのです。
つまりは、「ビザの取得とは日本に在留するための一連の手続きの中の一部である」ということです。
ではその『一連の手続き』の中には具体的にはどのようなものが含まれているのでしょうか。
ここでは、ビザの取得を含む日本に在留するための一連の手続きの概要と流れを解説します。
① 在留資格認定証明書の入手
② 査証(ビザ)の入手
③ 上陸審査/上陸許可
④ 在留カードの受領
① 在留資格認定証明書の入手
在留資格認定証明書 【certificate of eligibility(COE)】
外国人が日本国内で行う活動を証明するもの。
外国人からの申請に応じて法務省が発行します。
在留資格認定証明書とは「外国人が日本国内で、どのような活動(例えば、仕事、勉強、教育等)を行うのかを証明するための証書」のことです。
在留資格証認定明書は、一般的には申請取次者等によって日本国内における手続きのみで入手することとなります。
これは、在留資格認定証明書が原則として日本国内にしかない出入国在留管理局という場所で発行されるからです。
上記の事情により、在留資格認定証明書は、一般的には下記の手順によって発行されています。
申請取次者が、申請者に対して、在留資格認定証明書の発行申請に必要な書類のリスト等を送付する。
⇩
申請者本人が、本国(申請者の居住している国のこと)において、申請に必要な書類等を準備する。
⇩
申請者本人が、準備した書類を日本にいる申請取次者へと送付する。
⇩
申請取次者が、その書類を持って出入国在留管理局に在留資格認定証明書の発行申請を行う。
在留資格認定証明書は、査証(ビザ)を入手する前の段階で発行してもらうものです。
そして最も重要なのが、在留資格認定証明書は、必ずしも発行する必要はなく、発行せずとも査証(ビザ)を入手することが可能だということです。
では、何のためにわざわざ在留資格認定証明書を入手するのでしょうか?
その理由は、大きく分けて2つあります。
★在留資格認定証明書を入手するメリット1
在留資格認定証明書を持っていることによって、日本に上陸するための要件の1つである在留資格該当性があることを、事前に証明しておくことができるというものがあります。
日本に上陸するためには、入国審査官によって行われる上陸審査をパスしなければなりません。
海外旅行に行ったことがある方の中には、飛行機で海外の空港に着いた後に、スタッフの方に入国目的を尋ねられて「サイトシーング(観光)」と答えた経験がある方が多いと思います。
あれがいわゆる上陸審査だとイメージして頂いて、とりあえずは大丈夫です。
日本でも、海外から来て日本に入国する外国人に対してそのような上陸審査が勿論行われています。
そして、その上陸審査にパスするための要件は、入管法第7条第1項 第1号~4号に記載されています。
その要件の中のひとつに、在留資格該当性という項目があり、この在留資格該当性は、在留資格認定証明書を持っていることが考慮された上で審査が進められるのです※。
※在留資格認定証明書があっても、在留資格該当性が認められない場合もあります。
上記の要件のうちのいずれかが入国審査官によって否定されてしまえば、基本的には、わざわざ飛行機に乗って日本に来たのに、そのまま本国にとんぼ返りするしかなくなってしまいます。
つまりは、在留資格認定証明書を事前に入手しておけば、本国にとんぼ返りせざるを得ない状況に陥る可能性を事前にひとつ潰す準備をということになります。
上記のような理由があるので、何か特別な理由がない限りは、日本へ来る前に在留資格認定証明書を入手しておくことが、一般的には推奨されています。
★在留資格認定証明書を入手するメリット2
査証(ビザ)取得申請をする際に在留資格認定証明書を提示すると、一般的には査証申請審査に掛かる時間が短縮され、尚且つ、より確実に査証申請審査をパスすることができるというものがあります。
査証申請についても、審査をパスしなければ査証を入手することができず、パスするための要件は、査証事務処理規則第7条1項 第1号~4号に記載されています。
その要件の中のひとつに、やはりこちらも在留資格該当性の項目があり、在留資格認定証明書を持っていることが考慮されたうえで、在留資格該当性の審査が進められることになります。
査証申請においても、やはり要件のうちのいずれかが否定されてしまえば、査証の発給を受けることができません。
そして注意しなければならないのが、査証申請審査を受けた結果、査証発給拒否された(つまり、ビザを入手できなかった)場合は、その後6か月以内は、申請した査証と同一の査証の申請をすることができません。
つまりは、基本的には、査証の申請が拒否されたら、その後6か月間は日本における在留を開始することができなくなってしまうのです。
上記のような大変な不都合が発生する可能性があるので、やはり在留資格認定証明書の入手が強く推奨されています。
もう少し噛み砕くと、査証とは、
①外国人が持っている旅券(パスポート)が有効なこと
②その外国人が日本に入っても問題がないこと
が確認された際に発行される証明書といった具合に理解して頂ければ大丈夫です。
ちなみに、査証が発給されるといっても「査証」というような名称の書類が貰えたりするわけではなく、査証の発行地や有効期限、ビザ取得者の氏名等の情報がプリントされたシールを、パスポートに張り付ける形で発給されます。
査証の申請は、基本的には申請人本人が在外公館(各国にある日本国大使館等のこと)にて行います。
なお、在外公館で査証を発給してもらわないでも、日本に入国できるケースもありますが、こちらについてはここでは割愛します。
査証といえば、なんとなく「日本に入国した後にも持っていなければならないもの」であるような気がしないでもないのですが、実のところ、日本への入国が済んだら査証はお役御免となり、以後の出番は無くなります。
③ 上陸審査/上陸許可
「上陸」とは、日本の領土に足を踏み入れることを意味しています。
これに対して、入管業務には「入国」という「上陸」と似たような言葉も登場します。
なお、「入国」とは、日本国の領域に入ることを意味しています。
ここでは両方とも「両方とも日本に来ることでしょ?」とザックリとらえておいて頂ければOKです。
外国人は、飛行機で日本の空港に到着した後、上陸審査を受けることになります。
上陸審査とは、上記「 在留資格認定証明書を入手するメリット1」にてご説明したものですね。
入国審査官は、上陸しようとしている外国人が4つの要件を満足しているか否かを審査した上で、上陸の可否を決定します。
なお、上陸審査の結果、上陸許可が出された場合には、それと同時に在留資格が与えられます。
少々ややこしいですが、下記のように考えればすっきりすると思います。
上陸許可:日本に入ることを許すだけのもの。
在留資格:日本に入った後に、外国人がしてもいい活動を定めるもの(噛み砕いて言えば、「あなたは日本で仕事をしてもいいですよ」、「君は日本で留学生として勉強をしていいですよ」というようなお許しのこと)。
また、在留資格が与えられると同時に、在留期間(「在留できる期間」)の指定も受けることとなります。
どの在留資格にどの程度の長さの在留期間が与えられるのかという情報は、入管法施行規則に列挙されており、短いものは15日、長いものは5年となっています。
入国管理局は裁量(いわば匙加減)で、入管法施行規則に列挙された在留期間の中から入国する外国人に最も適当と思われる在留期間を選択します。
ちなみに、上記の通り、在留期間の決定には入国管理局の裁量が認められますが、「こんなもんでいいだろ!ポイ」といった感じで在留期間を決定するのではなく、内部的な審査基準に則って、妥当な在留期間が決定されています。
④ 在留カードの受領
在留カードとは、在留者の氏名、住居地、在留資格、在留期間等、在留者の在留者たる身分を証明する情報が記載されたカードです。
上陸審査が済み、在留資格と在留期間が与えられた後には、在留カードが交付されます(短期在留者(3か月以下)には、在留カードは交付されません)。
在留カードの交付は、基本的には外国人が上陸許可を受けたときにその場で交付されます。
対して、上陸許可を受けた後にその場で在留カードを直ちに発行することができない場合には、外国人が日本国内で居住する住居宛てに簡易書留で郵送されます。
在留カードを無事に受領したら、やっと日本での在留が始まることとなります。
なお、中長期在留者には在留カードを常に携帯する義務や更新義務等が課せられており、義務を履行しない場合には罰則が適用されることもあるので注意が必要です。