
輸出業務に携わる方や、これから輸出管理体制を整備しようとしている企業の皆さんに向けて、今回は「出荷管理」について分かりやすく解説します。
「出荷管理ってただの物流業務でしょ?」と思われがちですが、実は輸出管理の最後の砦とも言える重要なプロセスなのです。
輸出管理とは?(おさらい)
まず簡単におさらいですが、輸出管理とは、安全保障上の理由から、日本から輸出される貨物や技術が不適切に使われないように管理する制度のことです。
特に以下のような目的で規制が行われています。
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大量破壊兵器や通常兵器への転用防止
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国際的な平和と安全の維持
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国連制裁決議の履行
日本では「外国為替及び外国貿易法(外為法)」が根拠となり、輸出管理が行われています。
出荷管理とは?
出荷管理とは、最終的に貨物が出荷される前に「本当に問題ない相手に、正しいものが、正しい方法で送られるか」を確認する業務です。
言い換えれば、「輸出していいと確認した内容」と「実際に出荷される内容」が一致しているかを最終チェックするプロセスです。
工作機械の出荷管理を例にあげると、
例えば門型のマシニングセンタやプレス機などの比較的大きな機械(貨物)になると、そのままの状態では、一般のコンテナには収まり切れないので、何個かに分解して輸送されます。
その際に、パッキングリスト(輸送する貨物の出荷表)にどの機械の付属品なのかが明確に分かるように明示しなければなりません。
出荷管理では、このパッキングリストの内容(品番や型番、各付属品の有無、大きさや重さ等)と実際の貨物が一致しているかどうかの確認が重要なタスクになります。
出荷管理で確認すべき主な項目
1.輸出許可の要否確認
・対象貨物がリスト規制品・キャッチオール規制対象か?
・許可が必要な場合、経済産業省の許可は取得済みか?
2.輸出先や最終仕向地の確認
・相手先が過去に審査済みか?
・名義貸しや第三国経由の不正輸出ではないか?
3.輸出する貨物の内容確認
・型番、数量、梱包形態、ラベル表示が正しいか?
・契約書・インボイスと一致しているか?
4.輸送手段・方法の確認
・航空便/海上便の選択は正しいか?
・禁止輸送品・制限輸送品に該当しないか?
5.最終チェック者の記録
・誰が、いつ、どの内容を確認し、出荷を承認したかの記録を残す
なぜ出荷管理が重要なのか?
出荷管理は、輸出管理の「最後の確認ポイント」です。
仮に、取引審査や契約段階で万全のチェックを行っていても、出荷時に誤って無許可の貨物を送ってしまえば、違法輸出となってしまうのです。
これは企業にとって以下のような重大リスクを伴います:
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外為法違反による刑事罰や行政処分
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社会的信用の失墜
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再発防止命令や事業停止リスク
つまり、出荷管理は「万が一のミスを防ぐ最後の砦」なのです。
出荷管理の運用例(具体的なフロー)
以下は、一般的な企業における出荷管理フローの一例です。
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社内出荷依頼書の提出
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輸出管理担当者による確認
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輸出許可の有無
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貨物内容とインボイスの突合せ
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上長または管理責任者の承認
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物流担当者への出荷指示
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実出荷と輸出書類の控え保管
また、企業によっては出荷保留制度を導入しており、確認が完了するまで物理的に貨物を倉庫から出せないようにしている場合もあります。
許可との「ズレ」が出やすいポイントに注意!
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仕様変更や数量変更が後から発生
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出荷時に代替部品が使用されている
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許可書類と通関書類の名称表記が微妙に異なる
こうしたズレを見落としてしまうと、「許可と異なる内容で出荷した」と見なされるリスクがあるため、慎重な確認が求められます。
まとめ:出荷管理は“最後の安全弁”!
輸出管理の具体的業務の最終段階として、実施される出荷管理では、出荷される貨物と出荷書類との記載内容の同一性の確認はもとより、該非判定や取引審査などの社内手続きが完了していることの確認、加えて、外為法に基づく許可が必要な貨物の場合にあっては、これが取得されていることの確認なども重要となる。
チェックポイント | 内容 |
許可の要否 | 対象品かどうか、許可取得済か |
相手先・仕向地 | 適切な相手に届けられるか |
貨物内容 | 契約・許可内容と一致しているか |
記録の保存 | 誰が、いつ、何を確認したか |
出荷管理は、営業や契約部門と連携しながら、組織的に行うことが求められます。
属人的にならず、ルール化・記録化を徹底しましょう。
この記事が、輸出管理に携わる皆さんの実務の一助になれば幸いです!