種苗法改定は海外流出の歯止めになるのか②


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前回の記事でも述べたが、もう一度問題点を述べさせていただくと、公共の種が企業に移れば自家増殖を許諾してもらえず、企業から毎年買わざるを得なくなることにある。

 

 

育種家(グローバル企業を含む)の利益を増やさないと新たな育種が進まないというが、裏を返せば、それは種苗を使用する農家の負担は必然的に増えていくことを意味している。

 

 

しかも、何と、公共の種が民間に移る前に、県などが「受益者負担」の導入として、農家に提供する種もみなどの価格を3倍以上に引き上げるなどの措置を取り始め、

 

 

すでに農家の負担が増大しつつあるのです。

 

 

また、登録品種は1割程度しかないから影響ない、という政府が説明する根拠は、稲の登録品種の占める割合(参考:鈴木宣弘研究所調査資料:都道府県毎約2割~9割)を見ても崩壊していることがわかります。

 

 

 

 

ただし、農水省を責めるのは酷です。

 

 

自らの意志とは別次元からの指令で決まったことに、苦しい理由付けと説明をさせられているのが担当部局の現状だと思うからです。

 

 

良識ある官僚には断腸の想いであったと想像できます。

 

 

 

 

 

安全保障の要である食糧のその源は種である。

 

 

野菜の種の販売元は、日本の種苗会社が主流とはいえ、種採りの9割は外国の畑で行われています。

 

 

種までさかのぼると、野菜の自給率は8割ではなく、 8%となってしまいます

 

 

コロナ渦で、海外からの種の供給にも不安が生じていました。

 

 

さらに、コメ・小麦・大豆も含めて自家増殖が制限され、海外依存が進めば、種=食料確保への不安がより一層高まるのではないでしょうか。

 

 

 

 

「種は誰のものなのか」、ということをもう一度考え直す必要があります。

 

 

種は、私たち人類が何千年にもわたってみんなで守り育ててきたものです。

 

 

それらの想いが根付いた各地域の伝統的な種は、農家とその地域にとっての食文化と結びついた一種の共有資源であり、個々の所有権には馴染まないはずです。

 

 

育成者権は、そもそも農家の皆さんにあるといってもよい。

 

 

種を改良しつつ守ってきた長年の営みには、莫大なコストと労力がかかっています。

 

 

そうやってみんなで引き継いできた種を、「今だけ、金だけ、自分だけ」のために企業が勝手に素材にして改良し、それを登録して儲けるための道具にするのは、「ただ乗り」をして利益を独り占めする行為と同じではないでしょうか。

 

 

だからこそ、農家が種苗を自家増殖するのは、種苗の共有資源的な側面を考慮して守られるべき権利ということになる、と私は考えています。