経済安全保障における「工作機械・産業用ロボット」の現状について


近年、この「経済安全保障」と言う言葉をよく耳にすることが多くなりました。

しかし、この「経済安全保障」とは一言でいうと何なのか?

調べてみても、この「経済安全保障」の意味を定義した法律は見つけられませんでした。

 

2022年5月11日に成立した「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」(以下、略称「経済安全保障推進法」)の条文にも定義は規定されていません。

しかし、この法律の第1条(目的)の中には、「安全保障を確保するため〜」とあり、法的定義ではないですが、「経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止すること」と解釈できるのではないでしょうか。

この経済安全保障が注目を集めるようになった1つの背景として、まず「サプライチェーンの問題」があります。

 

例えば、近年、多くの産業に必要不可欠な半導体が世界的に不足し、日本国内でも、自動車の生産が遅延するなどのケースがありました。

 

また、感染症予防や治療に不可欠な「抗菌性物質製剤」の注射用抗菌薬の85%以上を占めるβラクタム系抗菌薬については、ペニシリン系もセフェム系も無菌化・乾燥・充填等の製品化工程を主に日本国内で行われています。

しかし、原材料や原薬については、採算性などの問題により、中国1カ国からの調達に依存しているといいます。

2019年に中国での製造トラブルで、原材料の供給が途絶え、βラクタム系抗菌薬である「セファゾリン」が欠品し、一部の医療機関においては、手術を延期するなど、深刻な事例が報告されたといいます。

 

肥料についても、農作物生産に不可欠であり、供給が途絶えると農作物の収量の維持が困難になります。

しかし、肥料の原料については、資源が特定の地域に偏在しており、日本はほとんどを輸入に依存しています。

2021年秋以降、世界的な穀物需要の増加や紛争の発生といった国際情勢の変化により原料供給が途絶するリスクが顕在化していると言われています。

 

サプライチェーンの問題は、その他の各産業にも同じような懸念が生じており、「特定重要物質」として指定されており、物質所管省庁において、分析と評価を行っています。

この中には、表記にある「工作機械・産業用ロボット」も指定されています。内容を以下に示しましょう。

 


 

工作機械と産業用ロボットの活用が不可欠と想定される工業製品や業種の割合は、製造業の名目GDPのうち、約5割を占めると言う統計(2020年)もあり、工業製品の製造プロセスにおいては欠かせないものとなっています。

世界市場における日本メーカーのシェアを見ると、現在も比較的強い分野ではあります。

工作機械については、日本、米国、欧州、アジアの上位5社で比較した全世界売上高に占める日本メーカーのシェアは、2022年で44%でしたが、2018年の48%からは微減しています。

産業用ロボットについては、全世界の新規導入台数に占める日本メーカー(国内生産分)のシェアは、2020年で45%でしたが、2011年の59%からは大きく減少しています。

中国が「中国製造2025」の重点分野の1つに「CNC工作機械・ロボット」を掲げ、官民一体の取り組みを進めています。

企業誘致、買収、技術獲得などによって、急速にキャッチアップしてきているという背景が伺えます。

また、専用部素材(ボールネジやリニアガイドなど)についても、中国の台頭が著しく、さらに汎用部素材である鋳物については、国内供給量の過半を中国が占めています。

この鋳物というのは、工作機械の中でも、「要」となる部素材であり、現在の最先端を支える高精度な精度を保つには、この鋳物の技術が必要不可欠であると言われています。

 

2021年時点における海外依存度を見てみます。

①「工作機械」海外依存度 : 25%

主な輸入先 : 中国28%、ドイツ20%、タイ16%

②「産業用ロボット」海外依存度 : 2%

主な輸入先 : 中国36%、デンマーク14%、台湾13%

 

将来にわたって、製造業の事業基盤たる工作機械や産業用ロボットの海外依存リスクを低減するため、国内生産能力や技術力を強化し、国際競争力の維持・強化を図るべき局面に来ています。

中国が力を入れている。CNCは、「Computer Numerical Control」の略称で、工作機械や産業用ロボットが取るべき動作を数値情報に換算して、制御する機能やそのためのコントローラーを指します。

このような制御関連機器は、工作機械や産業用ロボットの性能を非常に大きく左右する部素材であり、日本でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)やCN(カーボンニュートラル)などのメガトレンドを踏まえて、拡大するニーズに対応していかなければならないとのことです。

工作機械や産業ロボットについては、2024年5月末までの認定事業は5件であり、支援主体は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構です。

これらの事業により、CNC(コンピュータ数値制御)システム、サーボ機構(自動制御装置)、PLC(製造業の機器や設備をコントロールする制御装置)、減速器及び基幹部品(ベアリング)の生産設備の増強が進んでいく見込みです。

 


 

上記「工作機械・産業用ロボット」以外にも、外国への技術移転対策など課題となる「特定重要物質」にあってはその他に、冒頭で述べた「半導体」をはじめ、「蓄電池」「航空機の部品」「先端電子部品」などがあげられる。

外国為替及び外国貿易法(外為法)」の厳格な運用やその対象について不断の見直しが行れることが一層予想されます。