輸出許可不要となる特例①少額特例


規制対象となる貨物(モノ)や技術(情報等)を海外へ輸出(提供)する場合は経済産業大臣の許可が必要です。

ただし、本来は許可が必要な取引であっても、例外的に許可が不要となるケースもあります。

許可が不要となる例外等は貨物と技術について、それぞれに定められており次の様なものがあります。

・少額特例(貨物)

・無償特例(貨物)

・許可を要しない役務取引(技術)

輸出許可申請前にこれから輸出する貨物・技術がこの例外に該当しないか確認します。

※:武器(輸出貿易管理令別表第1の1の項)には適用されません。

 

該当する場合は、許可申請手続きを経ることなく輸出できます。

今回はこの中の①少額特例について説明していきます。


少額特例(貨物)

輸出令別表第1の項番 輸出令別表第4の地域以外 輸出令別表第4の地域
1の項 × ×
2~4の項 × ×
5~13の項(※告示貨物) 5万円以下 ×
5~13の項(上記以外) 100万円以下 ×
14の項 × ×
15の項(※ 5万円以下 ×
16の項 × ×

:告示貨物とは輸出令別表第3の3の規定により、経済産業大臣が告示で定める貨物(モノ)。

:輸出令別表第1の15の項は輸出令別表第3の3で規定されている。

 

輸出令別表第1~15の項の確認はこちらに記載しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<注意事項>

・対象となる仕向地は、イラン、イラク、北朝鮮以外の地域です。

キャッチオール規制には適用されません

少額特例が適用される場合、包括許可は適用されません(そもそも許可義務がない)。

・総価格は個々の貨物価格ではなく、1回の輸出契約ごとに対して輸出許可の対象となる貨物を輸出貿易管理令の別表第1の各項のカッコごと(例えば「6の項(2)」「7の項(1)」等それぞれ)に区分けしたものを「総価額」とします。

 

 

近年、国際的な半導体関連の需要が高まっている背景を例に、具体的な取引例で説明しましょう。

 

以下の条件で貨物を輸出する場合の少額特例の適用の有無についてを例にあげます。

前提条件として、三型番とも告示貨物には該当せず、キャッチオール規制の規制要件にも該当しない場合。

 

 仕向地 : 台湾

 輸出貨物: 輸出令別表第1の7の項(1)に該当する以下の三型番の「集積回路」

      イ. 集積回路(型番:A-001):価額:計50万円

      ロ. 集積回路(型番:B-001):価額:計50万円

      ハ. 集積回路(型番:C-001):価額:計50万円

 

100万円以下なら大丈夫だろうと思い、二型番のみなら同特例を適用できるのでは?若しくは何度かに分けて輸出すればいいのでは?と思うところですが、この場合、少額特例は「契約単位で」かつ「項番のカッコ毎の総価格」で判断することとされている。

 

このカッコ毎とは、上の例の場合、「7の項(1)(集積回路)」の赤字のことです。

 

よってこの場合の取引では、総価格が50万円+50万円+50万円=150万円となり、少額特例は適用できないということになります。

 

もう一つ上記と同じ前提条件で、次は中国向けに以下の貨物を輸出する場合を例にあげてみます。

 

 仕向地 : 中華人民共和国

 輸出貨物: イ. 輸出令別表第1の7の項(1)に該当する「集積回路」(価格:80万円)

       ロ. 輸出令別表第1の10の項(8)に該当する「レーザー発振器」(価格:90万円)

 

この場合、仕向地は「輸出令別表第4に掲げる地域以外」に分類され、また総価格が「5万円以下」とされる「告示貨物」若しくは「15の項番」、「少額特例適用対象外貨物」のいずれでもない

 

また、一つの契約で適用できるカッコ毎の総価額は100万円以下となるため、この場合7の項(1)が80万円、10の項(8)が90万円となり、同特例は適用できることになります。

 

 

 ・少額特例の適否は、貨物が輸出される時点で判定されます。(※

参照:経済産業省のホームページ「許可が不要となる場合(貨物)

 

:輸出契約が外貨で行われている場合には、少額特例の適否の判定も円貨への換算を経た後のものですが、この際の換算レートは月毎に定められるレート(日銀が公示す相場)であってその契約時点が属する月のものを用いることになります。

 

上記※の少額特例の換算率に関しては、運用通達1-1の「(6)総価額への換算」で、「外国通貨をもって決済される場合の当該外国通貨と円との換算は、別に定める換算率による。」と規定されています。

 

当該規定における、「別に定める換算率」とは、具体的には「輸出貿易管理令、輸出貿易管令及び外国為替令等に規定する円表示金額を算定する場合の換算の方法について」を指し、財務大臣が日本銀行において公示する契約締結日の属する期間の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場を用いるとしています。

 

詳細はこちらへ「https://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/

 


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