
日本の安全保障貿易管理制度は「外国為替及び外国貿易法」(外為法)で規制されており、貨物に関しては外為法第48条に、技術に関しては同第25条に規定されています。
また上図に示す通り、貨物・技術ともに政令により、具体的な規制内容が定められており、貨物に関しては「輸出貿易管理令別表第1」(輸出令別表第1)に、技術に関しては「外国為替令別表」(外為令別表)にそれぞれ定められています。
また、平成14年4月からはキャッチオール規制が導入されました。
安全保障貿易管理関連法令の全体の構造としては、「法律」、「政令」、「省令・告示」、「通達」、「お知らせ」よりなっており、これら全ての法令等の改正に注意を払い、常に最新の規制内容を確認することは、安全保障輸出管理を適格に実施するための大前提となります。
輸出貿易管理令別表第1、外国為替令別表ともに関連する兵器や貨物等のカテゴリーに応じ1~15の項に分類されています。
この各項番は国際輸出管理レジームという国際的な枠組みに対応しています。
1から15の項による規制を「リスト規制」(許可が必要となるリスト)と呼んでいます。
下記の表に、貨物の輸出と技術の提供において、規制される品目を規定している法令の構造を示しました。
法律 | 政令 | 省令 | 通達 | |
貨物(モノ) | 外為法第48条 | 輸出令別表第1 1~15の項 |
貨物等省令 1~14条 |
運用通達 |
技術(情報等) | 外為法第25条 | 外為令別表 1~15の項 |
貨物等省令 15~27条 |
役務通達 |
(品目を規定) | (仕様・スペックを規定) | (用語の解釈等) |
※法の優劣:憲法>条約>法律>命令【政令>内閣府令>省令等(通達)】>条例
貨物について、輸出しようとする貨物が輸出令別表第1の1~15の項に該当する場合や提供しようとする技術が外為令別表の1~15の項に該当する場合には、経済産業大臣への許可申請が必要となります。
リスト規制は国際的な合意に基づき、武器及び大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれの高いものを規制しています。
具体的には、全地域を規制対象とし、規制対象となる品名や仕様やスペックがリスト化されています。
上記の各仕様やスペックに該当するか否かの判定(該非判定)は、輸出管理の最も基本となる業務になるので、しっかりと該非判定を行う必要があります。
スペック等を判定するための品目が全く無い場合は「対象外」となるわけですが、例えば、貨物によっては、その附属品や部分品まで規制の及んでいるものもありますし、また規制品目は法令用語で書かれています。
一般的な商品名等ではないこと、貨物等の機能や材質、特性等の観点より規制がなされており、例えば輸出する貨物の名称がないからといって、安易に「対象外」と判断するのは誤りです。
また一つの項番だけでなく複数の項番で規制されている場合もあります。
例) 5軸マシニングセンタの場合、輸出令別表第1の2の項(12)及び6の項(2)
従って、政省令のみならず解釈をも含めて規制の内容を注意深く読むことが必要です。
その結果、もしスペック等を確認すべきものがあった場合、その項番に対応する判定帳票(項目別対比表、パラメータシート等)を選択し、漏れなく記入を行い該非を判定します。
その結果、規制対象となる場合を「該当」、規制対象とならなかった場合を「非該当」と言います。
輸出管理とリスク管理
不正輸出や不正技術の移転が発覚することにより、以下のようなリスクがあります。
・安全保障上の損害
・経済的損害
・道義的責任
これらは、法律で以下のような制裁があります。
・刑事罰(罰金刑や懲役刑が科される場合があり、具体的には、懲役10年以下、違反目的物の価格の5倍(要件有)、若しくはこれらを併科される場合もあります。)
・行政制裁(最長3年以内の輸出・技術提供の禁止、法人単位で科せられる。)
・社会的制裁(信用失墜、株式代表訴訟など)
輸出管理はリスク管理とも呼ばれています。
輸出者自身が輸出時に「相当の注意」を払ったか、そしていざ説明を求められたとき、その行動(輸出)を根拠を持って説明責任を果たせるかどうかが大切です。
対象取引 | 罰則水準 | 根拠規定 |
無許可の技術取引 | 7年以下の懲役又は700万円(若しくは価格の 5 倍)以下の罰金、併科 | 第69条の6第1項一号 |
無許可の仲介取引 | 7年以下の懲役又は700万円(若しくは価格の 5 倍)以下の罰金、併科 | 第69条の6第1項一号 |
無許可の貨物輸出 | 7年以下の懲役又は700万円(若しくは価格の 5 倍)以下の罰金、併科 | 第69条の6第1項二号 |
無許可の核兵器等関連技術取引 | 10 年以下の懲役又は 1000万円(若しくは価格の 5 倍)以下の罰金、併科 | 第69条の6第2項一号 |
無許可の核兵器等関連貨物仲介取引 | 10 年以下の懲役又は 1000万円(若しくは価格の 5 倍)以下の罰金、併科 | 第69条の6第2項二号 |
無許可の核兵器等関連貨物輸出 | 10 年以下の懲役又は 1000万円(若しくは価格の 5 倍)以下の罰金、併科 | 第69条の6第2項二号 |
輸出許可や役務取引許可を取得する場合、通常の審査期間は受理がされてから90日以内だと定められています。この期間を超える場合には、事前に通知が来るようになっています。
この間、当然ですが輸入者や需要者は、引き合いを行った貨物(モノ)などを待っていないといけません。
しかし、非該当ですぐに輸出できたとしても、後から問題が見つかり、説明責任が果たせなければ前述した制裁を被ることになります。
いずれにしても最終的な判断で非該当の貨物(モノ)を輸出した場合、責任はすべて輸出者になりますが、適正な輸出管理を行い、経済産業大臣の許可を取得して輸出を行った場合、その責任は、、、
大臣?輸出者?それとも税関?なのでしょうか。
その他ご不明な点等ございましたらお気軽にご連絡ください。
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